内容説明
結婚願望や貧乏生活、あるいは故郷沖縄のなつかしい風景やビキニ核実験を描いたものなど、推敲に推敲を重ね、ユーモアにみちた滋味掬すべき詩を書き続けた詩人山之口貘のエッセンス。
目次
『思辨の苑』(むらさき出版部、一九三八)(襤褸は寝ている;加藤清正 ほか)
『定本山之口貘詩集』(原書房、一九五八)(喪のある景色;世はさまざま ほか)
『鮪に鰯』(原書房、一九六四)(野次馬;ひそかな対決 ほか)
『新編山之口貘全集』(第1巻 詩篇)(思潮社、二〇一三)(吾家の歌;あわてんぼう ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
125
一生を通じて貧困と闘い続けた沖縄生まれの詩人、山之口獏の代表作を収録した詩集。「詩」と「地球」という言葉が何回も出てくるところが印象的だった。詩の中で「詩」という言葉をこれほど使う詩人は、他にいないと思う。それだけ詩が好きで、詩なしでは生きていけなかったのだろう。「地球」という言葉が出てくるのは、この社会からはみ出し続けて、天上の世界に飛び出して、地上を見下ろしていたからだろうか。苦しい人生だったと思うが、腹の座った人物であり、この世のどうしようもなさを、笑い飛ばすようような詩魂に心を打たれた。2016/06/19
さゆ@俳句集販売中
109
貧乏な日常の詩が多いが、なんだかおちゃらけた哀憐みたいな感じでユーモアが光る。後半は森見登美彦エッセンスばりの家族漫談詩?が多くて笑えた。特に「襤褸(ぼろ)は寝ている」が良く、うつ伏せで寝ているのを地球を抱く、トイ・ストーリーのように石や紙や吸殻や神仏が起きる、星々と夜の底の対比などの描写は発想とスケールが大きくて素晴らしい。日々の日常が大変だとどうしても近くのことばかり考えてしまうが、無限の想像力をはたらかせれば世界もまた無限に美しくなるように感じた。「貘(ばく)」「ねずみ」も良かった。2023/12/17
へくとぱすかる
55
「頭をかかえる宇宙人」をはじめ、読みながら曲と歌が再生されて止まなかった。ことごとく高田渡さんの声で朗読を聴いているように読み終える。フォークを通さなければ、知ることがなかったかもしれないが、もっと早くに読んでおくべきだった。しかし改めて読んでみると、これほどの口語現代詩は、他にないのでは、と思わせるすごい作品群である。大切にしてまた再読したい。2019/06/29
kochi
18
実家が没落して沖縄から上京し、放浪と野宿の生活を続けて、放浪詩人と呼ばれた山之口貘。一編の詩の推敲に原稿用紙100枚も200枚も使うことがあるため、「ぱあ」ではないのかと呼ばれたこともf^_^; 生涯たった200位の詩を公表し、処女詩集を出版した時には妻の前で泣き叫んだという。「あれを読んだか/これを読んだかと/さんざん無学にされてしまった揚句/ぼくはその人にいった/しかしヴァレリーさんでも/ぼくのなんぞ/読んでない筈だ」(博学と無学)痛快ではないか!2016/11/13
かんがく
14
掲載されている多数の詩によく出てくる言葉を並べてみると、「あめりか」や「敗戦」などの政治的な言葉と、「金」や「食」などの生活臭がする言葉が目立つ。それらの言葉を「僕」と「地球」が包んでいるような詩集だった。2023/01/29