内容説明
歌謡曲の作詞家、童謡詩人として知られる西條八十(一八九二‐一九七〇)。訳詩は語学者の仕事ではなく、詩人の仕事だとの強い自負を抱いて、若き日に世に問うたのが訳詩集『白孔雀』(大正九年刊)である。『白孔雀』全篇に加え、その他の訳詩の佳篇を精選して収録。
目次
『白孔雀』(愛蘭詩抄;英国新詩抄;米国新詩抄;十五の唄;ボオドレエル二篇;大鴉 其他;散文詩抄)
『西條八十訳詩集』より
『世界童謡集』より
単行本未収録詩より
感想・レビュー
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HANA
40
訳詩集。以前読んだ中原中也訳『ランボオ詩集』もそうであるが、詩人が訳した詩というのは、どうしてもその訳者独特の言葉遣いとリズムが宿ってしまい、どこまでが原作者の作品であるか訳者の作品であるかが難しい。本書も初期の絢爛たる言葉遣いはあるし、後年の童謡を思わせる言葉遣いはあるし、で詩人としての訳者が前面に出ている。「詩の翻訳は詩人によって」という著者の言葉に頷かされるなあ。訳されている詩はポオの「大鴉」始めボードレールありハーンありタゴールありと多彩で、訳者の審美眼の確かさを思わせる。2014/01/30
藤月はな(灯れ松明の火)
39
お洒落な市松模様のカバーと言い、西條八十や中原中也など、日本の有名詩人による翻訳文といい、最近の岩波文庫の詩集は本当にいい仕事をしていると言えます。特にポーの「大鴉」は日夏耿之介のnevermore=「またとなけめ」が強烈だったために西條版での「またあらじ」という訳にしている新鮮さや怪奇・幻想小説で有名なデ・ラ・メアの詩などの発見もありました。個人的には「織師の唄」とロセッティの「風」が好きです。そしてロバート・ルイス・スティーブンソンの詩は英国版、谷川俊一郎みたいです。2013/12/10
スプーン
33
うぅ、すごい出来。詩人の朽ちざる美学。この詩集はどこかで「甘美なる永遠」と繋がっている。これまでも、これからも。2018/08/26
クラムボン
14
童謡や歌謡曲の作詞家のイメージが強い西條八十だが、若い時は象徴詩の詩人であった。27歳の時「訳詩は語学者の仕事で無く、詩人の仕事だ。」との強い自負を抱いて発表したのが「白孔雀」。この時代の訳詩は《象徴詩人》西條八十の詩心が強すぎて、選んだ言葉の濃度が高く、しかも煌びやかで、文語体がクラシック過ぎて息も出来ないところがある。打って変わって童謡の訳詩では、平易な言葉で肩の力が抜けている。特にクリスティーナ・ロセッティの数編は、金子みすゞの詩かと思ったほど…西條八十の多彩さか?訳詩の面白さが十分堪能できたぞ。2023/07/22
双海(ふたみ)
13
学生時代にこういう文語調の訳詩集にはまっていました。「酒は唇(くち)よりきたり/恋は眼(まなこ)より入(い)る」 もうあの頃ほどの情熱はないけど、久々に胸が熱くなったな。2020/09/20