出版社内容情報
「この雨に泣いてる人は,お前さんばかしではないは」(広津柳浪「雨」)――新しい時代と心を語る,新しい言葉が模索された小説黎明期.違和感も陶酔も,いま触れるすべてが新しい.明治22―35年に発表された,逍遥・鷗外・鏡花・一葉らの12篇を収録.現代の読者のために語注を付す.(注・解説=山田俊治)(全六冊)
内容説明
模索と発見の小説黎明期。違和感も陶酔も、いま触れるすべてが新しい。明治二二年から三五年に発表された、逍遙・鴎外・一葉・鏡花らの一二編を収録。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
46
「くされ玉子」の女性への罵倒や「細君」の妻や下女の地位が如何に軽んじられていたのかの描写に気がくさくさ。「別れ道」ははぐれ者の二人がどうしても別離をしなければならない状況に遣る瀬無くなる。そして〆の「雨」も貧しくも想い合う夫婦の物語だが、世間に甚振られるかのような災難が彼らを次々と襲うにだ。だが、別れなければ、のっぴきならない状況になる事が理解しつつも互いを労わる二人は離れようとはしない。ラストの解釈は心中だろうか。否、二人は柵から抜け出し、新天地へと旅立った。そう、願いたくなるような気持ちで頁を閉じた。2024/03/07
みつ
26
明治篇の前半。鷗外『舞姫』、緑雨『かくれんぼ』、一葉『わかれ道』、独歩『武蔵野』のみ既読。文語文の作品も多く、改行も少ない作はさすがに読みにくいが、作者の文体の個性も際立つ。題材と文体が相俟って一番清新な感を受けたのは、清水紫琴の『こわれ指輪』及び『武蔵野』。前者にとどまらず、教師など新しい職に就く女性の物語が眼につく。露伴の『対髑髏』は幻想小説のようで、最近まで続くあの病気への恐怖心を強烈に描き出す。美妙の『この子』は、文体、内容ともども軽い読み物。柳浪の『雨』は陰鬱な描写と結末の余韻で集中の白眉。2023/11/11
汐
23
授業で読みました。明治文学は読みにくいものもありましたが、読み終えることができました。個人的に印象的だったのは樋口一葉の「わかれ道」と広津柳浪の「雨」。樋口一葉は読んだことがありませんでしたが、会話から成り立っていて読みやすかったです。広津柳浪の「雨」は悲惨小説と呼ばれているだけあって全体的に暗い印象でした。ですが、最後の結末は断定していない分、希望が持てるのかもしれないと思いました。2018/11/21
佐島楓
19
「舞姫」「武蔵野」既読。言文一致体でない作品もあり、読むのに時間がかかってしまった。清水紫琴「こわれ指輪」が印象深い。女性に教育など必要ない、結婚をして子どもを産むのが仕事だという考えが主人公の女性を苦しめる。女性にとってまったく生き辛い世の中であったことをひしひしと感じさせる作品だった。2013/08/04
塩崎ツトム
18
【細君】「フェミニズム」前のフェミニズム小説。【舞姫】年喰ったせいで、主人公の立場にもちょっと同情してしまう。【武蔵野】何度読んでもこのランドスケープの筆致が心地よい。2024/07/23