出版社内容情報
鴎外の妹で,翻訳家としても知られる小金井喜美子(1870-1956)の回想録.観潮楼歌会で出されたレクラム料理のことなど,鴎外の日常生活を鮮やかに描く.明治中流の女性生活誌としても興味ぶかい.(解説=森まゆみ)
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TERU’S本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
65
日々の生活のちょっとした出来事に垣間見る氏の人柄や思考、そして嗜好。人柄の面では、庭での麻裏草履”裏返し”の件。心の平静を保つ、取り戻す場という感。思考では、兄弟愛。葛餅や寄席で著者のさり気ない心と共に、“おかめ”への喜びと懐かしみ。著者の手紙を朱で正す、氏への皮肉にも愛情が滲む。嗜好では、江崎写真館と餅茶漬け?!後者は想像つかないなぁ。その他、有名なエリス関連はまだしも、石本氏との件は氏の宮仕えの苦しみの一端を垣間見えるのが印象的。それにしても、雉子、梟や狐など、今では想像できない自然の宝庫も羨ましい。2018/11/29
sasa-kuma
19
森家読書年間⑤ 森鷗外の妹である小金井喜美子。今まで鷗外の子供たちの手記ばかりだったので、若かりし日の鷗外の様子や平和な森家の生活が新鮮。まっすぐな文章の中に、時々ちくりとさす棘のようなものがあるところが杏奴と似ていると思う。2016/04/04
F
19
鴎外の八歳年下の妹、喜美子が最愛の兄の思い出や、森家の日々の暮らしを美しく回想する。その教養、豊かな感性が大変素晴らしい、文の端々に鴎外やその家族に向けられる想いやいたわりを伺うことができる。鴎外研究の定番だが、普通のエッセイ集として見ても大変面白い。特に「レクラム料理」に登場する、鴎外の好物の描写は垂涎モノ…茄子の亀の甲焼き、今すぐ食べたい。皆さん、これは良い本ですよ!…こんな妹が欲しかtt2010/05/09
井戸端アンジェリか
17
先に鴎外の妻や子供たちの話を読んでしまったので、99%の先入観とヒイキを抱えての読始。全身全霊の兄様愛があふれております。 チラリと匂わす兄嫁への見下し。ああ、この世に心根の優しい小姑はいないのでしょうか。品の良さをベタ褒めするそこの貴方、父の患者さんの浣腸の件をベラベラと書き立てる事はお品がよくて? 一番先にこの本を読んでいたなら、また違った眼で見られた事と思います。きっと。2021/08/17
F
14
再読。本書は歌人で訳者でもあった喜美子が『日本古書通信』に寄せた断想を綴ったもの。解説によると彼女の文章は「明治の知識階級の女性らしい、品格のある、すらりとした、落ちついたもの」とあり、それは全く同感。作品以外の鴎外に触れることが出来ると共に、「ありませんかった」「しませんかった」という言い回しなど、明治期の中上流の生活を知る貴重な資料だ。2011/07/26