出版社内容情報
近代日本を代表する歌人の一人である窪田空穂(1877-1967)は,柳田国男を尊敬し,民俗学に大いなる関心をもっていたが,そのような空穂の考えをよく伝えてくれる随筆集.明治の農村文化の豊かさ,大正初めの東京名所めぐり,早稲田大学の思い出などを述べた文章からは,明治・大正の日本が鮮やかによみがえってくる.29篇を収録.
内容説明
近代日本を代表する歌人の一人である窪田空穂(1877‐1967)は、柳田国男を尊敬し、民俗学に大いなる関心をもっていたが、そのような空穂の考えをよく伝えてくれる随筆集。明治の農村文化の豊かさ、大正初めの東京名所めぐり、早稲田大学の思い出などを述べた文章からは、明治・大正の日本が鮮やかによみがえってくる。29篇を収録。
目次
農村の文化
明治十年代末期の私たち農村の子供
農家の子として受けた家の躾け
農村の最初の郵便局
栗
野麦
七十年前の中学生
島崎正樹翁のこと
信濃の女
ともし火〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
90
歌人窪田空穂の随筆集。岩波文庫屈指の名著だと思う。分かりやすくて読みやすい文章であり、衒いや気取りをまったく感じないところが素晴らしい。落ち着いて品位ある文章の間から詩情や著者の実直な生き方が静かに滲み出てくる。明治時代の農村の生活を描いた随筆が特に気に入った。物質的な豊かさはなくても、人間同士のあたたかなつながりや、慎ましい日々の生活の中にある輝きが伝わってくる。自分の生き方を振り返った「生来というもの」も良い。文学者として生きてきた人生を振り返る作者の筆はほろ苦くて、深い余韻を残す。2014/02/27
壱萬弐仟縁
6
14-15頁には農村と都市の対比で、農村は決して負けておらず、勇気が湧く。また、著者の兄は木曾福島の藩儒、武居用拙について漢学修養していた(47頁)。地元の偉人にしては、習った記憶がない。覚えておきたい。深志と長野が名門学校の理由も少しはわかる(91頁)。英語の秋山先生は、小感想をまじえて3,4回は繰り返した人のようだ(100頁)。こんな授業で思い出に残る教員が理想と感じた。秋山先生は辞書持込可で問題は面倒(102頁)。考える試験。慶應通信の如し。昔の早大もわかる(124頁~)。貧乏教職の時代があったと。2013/05/15
qv-yuh
5
没後90年ですね。 この4月に亡くなった大岡信のお父さんのご師匠筋。2017/07/30
シン
4
私と同じ松本出身の歌人、窪田空穂の随筆集。空穂は東筑摩郡和田村出身(現在の松本市和田)で、和田は松本の郊外ということで空穂が言う「松本の南西の農村」であって、これは今の和田にじゅうぶんあてはまるとは言い過ぎだろうか。前半は、空穂が早稲田大学入学まで過ごした地元和田村の風景や家族のことを。後半は農村から上京し早稲田大学に入学してからの人との付き合いが書かれている。歌人の随筆集であるが、歌に関することは収録されていない。「覚めてみる一つの夢やさざれ水庭に流るる軒低き家」2015/01/07
勝浩1958
3
明治時代の文人の言葉のまったく衒いを感じさせないところが好きだ。 2011/06/16