出版社内容情報
古泉千樫(1886‐1927)は若くして子規を中心とする根岸派に親しみ,子規没後左千夫に師事,「アララギ」の創刊とともに加盟,その発展に大きな力をなした.その作風は自然に対する新しい感覚,細かくゆきとどいた表現,温順で豊かな情感,1首をもゆるがせにしない自重的な作歌態度をもって知られる.900首余の秀作を選び,詳しい年譜,解説を付した.解説=土屋文明
感想・レビュー
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双海(ふたみ)
11
赤彦、茂吉らとともにアララギ派の発展に力を尽くした古泉千樫の歌集。九百余の秀歌を収録しています。この本、正漢字のままだから嬉しい。2014/02/18
壱萬参仟縁
8
「信濃行」(明治41=1908年23歳の時)では蓼科の地で詠んだことを窺い知れる(20ページ)。その一節は、「夜の山をひとりのぼりて今し來しこのわが友は雪袴はけり」。今もしんしんと雪が降っているな。「梟」(ふくろう 大正4=1915年30歳)では、「郊外の霧深みかも今鳴くはほろすけほうほう梟のこゑ」(47ページ)。読書もほぅほぅと感心して読むのがいいナ。「尾張犬山」では、「風強み船出さぬらし木曾川のたぎちの水を立ち見つるかも」(111ページ)。たぎち とは「激つ」という動詞で、水の湧き返る模様(広辞苑)。2013/02/15