出版社内容情報
中谷宇吉郎(一九〇〇‐六二)は雪と氷の研究に新生面を開いた物理学者として世界的に名高いが,また多くの秀れた随筆の筆者として知られる.「雪を作る話」「立春の卵」といった科学随筆,生涯の師とあおいだ寺田寅彦の想い出や自伝的スケッチなど,どの一篇からも随筆を読む愉しさをたっぷりと味わうことができる.四十篇を精選.
内容説明
中谷宇吉郎(1900‐62)は雪と氷の研究に新生面をひらいた物理学者として世界的に名高いが、また多くの秀れた随筆の筆者として知られる。「雪を作る話」「立春の卵」といった科学随筆、生涯の師とあおいだ寺田寅彦の想い出や自伝的スケッチなど、どの1篇にも随筆を読む愉しさをたっぷりと味わうことができる。40篇を精選。
目次
雪の十勝
雪を作る話
雪雑記
「霜柱の研究」について
私の生まれた家
『西遊記』の夢
簪を挿した蛇
九谷焼
由布院行
一人の無名作家
『日本石器時代提要』のこと
茶碗の曲線
指導者としての寺田先生
寺田先生と銀座〔ほか〕
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アルピニア
56
雪の研究で有名な中谷宇吉郎博士の随筆集。中谷氏は多くの作品を残しており、これは氏の門下生の一人である樋口啓二氏が精選した40篇からなる。科学論文のような明晰さと選りすぐられた言葉の流れが澄みきった渓流のように感じる。印象に残ったのは少年時代の経験から科学を論じた「簪を挿した蛇」、恩師寺田寅彦博士の優れた教育理念を彷彿とさせる「指導者としての寺田先生」、科学的思考の肝を感じる「地球の丸い話」「雪を作る話」。戦時下の科学研究を取り巻く状況を伝える「原子爆弾雑話」と「千里眼その他」は、衝撃だった。轍は踏むまい。2019/12/31
zirou1984
38
雪の研究で有名な物理学者、中谷宇吉郎の随筆集。一般的な科学者のイメージとは程遠い、親しみを感じさせる文章は夏目漱石の友人でもあった師匠、寺田寅彦の影響だろうか。師の訃報や弟の早逝に対する言葉はやはり悲しみの色が隠せないが、全体として時代や科学に対する暖かくも誠実な眼差しを感じさせ、戦後に関する言説は現代にもなお通用する。特に、科学が難解になる程その誤用が氾濫する「知の欺瞞」的な問題意識を昭和30年代の頃から持たれているというのは驚きであった。科学を愛し、文化を愛した人の言葉は、こんなに優しくも突き刺さる。2013/12/22
おせきはん
27
科学者として自然に謙虚に向き合う姿勢、師匠である寺田寅彦先生との思い出など、読み応えがあり、奥の深い随筆が多く収録されていました。物事を科学的、理性的に考えつつも温かい心を失わないよう気をつけます。2022/02/06
双海(ふたみ)
18
石川県に著者の名前を冠した「雪の科学館」があります。一度行ってみたいと思いつつ3年が過ぎました。2015/02/06
ねね
15
今までに無い、戦時下と敗戦後の中での宇吉郎先生の気持ちが描かれた「硝子を破る音」「流言蜚語」、素朴な「貝鍋の歌」「おにぎりの味」、寅吉先生を偲ぶ「指導者としての寺田先生」等々…ますます先生の人間味溢れ、やさしく、科学を愛したお人柄が偲ばれる随筆集でした。満足!半分くらいは読んだことのある物だったけど、並び順も良く新たな感銘も受けた。色々な意味で、日本人なら是非読んでおいてほしいと想う、大事な、大切な素晴らしい本と思ってます。(特に今の理研絡みで。)宇吉郎先生好きだ。2014/06/19