出版社内容情報
仰ぎみる文豪でもなければ,軍服に身を固めた軍医総監でもない鴎外.ここには,母や妻,子どもたちの中心となり,周囲に濃やかな愛情を注いだ家庭人の風貌が,少女の繊細な目を通して生き生きと描き出されている.著者は鴎外の次女.父の死直前のほぼ一年の思い出を綴る「晩年の父」ほか,「思出」「母から聞いた話」などを含む.
内容説明
仰ぎみる文豪でもなければ、軍服に身を固めた軍医総監でもない鴎外。ここには、母や妻、子どもたちの中心となり、周囲に濃やかな愛情をそそいだ家庭人の風貌が、少女の繊細な目を通して生き生きと描き出されている。著者は鴎外の次女。父の死直前のほぼ1年の思い出を綴る「晩年の父」ほか、「思出」「母から聞いた話」などを収める。
目次
晩年の父
思出
母から聞いた話
あとがきにかえて はじめ悪しければ終り善し
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
U
48
ひとまず表題作のみ読了。鷗外が亡くなる前年に焦点をあて、次女杏奴が語る父との思い出。とにかく、著者の父にたいする愛情がすごい。「パッパ、何してるの?」「星を見に行くんだ。アンヌコも一緒に来るか」微笑ましい親子のやりとりに、口元がゆるむ場面も多かったが、時折描写のなかに、恋人というかひとりの異性として、父をみなしているかのように感じられた部分があって、勝手にどぎまぎした。2015/11/13
双海(ふたみ)
21
再読。鷗外の次女:杏奴(あんぬ)の随筆。「アンヌコ、アンヌコ」と呼ぶ鷗外がなんだかかわいらしい。父鷗外が子どもたちに深い愛情を注いだのは、子どもたちの遠い将来への思慮あってのことであった。「お前はもっと子供の話を一生懸命に聞いて遣らなくてはいけない。大きくなるほど子供は親に何んでも話せるようにして置かないと、思掛(おもいがけ)ない間違が起るものだ」と父鷗外は母に語ったそうだ。2018/01/10
mayumi
17
森鷗外の次女による随筆集。姉・茉莉の「父の帽子」も良かったが、こっちの方がより自然で読みやすい。子供に深い愛情を与え続けた鷗外の姿がそこにある。興味深かったのは鷗外の子供との接し方である。彼が妻にこう語っている。「お前はもっと子供の話を一生懸命に聞いてやらなくてはいけない。大きくなるほど子供は親に何でも話せるようにしておかないと、思いがけない間違いが起こるものだ」。今の時代にも通じる考え方で、子供と真摯に向き合おうとしていたのがよくわかる。だからこそ、子供達は父親が大好きだったのだろう。2023/09/28
sasa-kuma
17
森家読書年間② 杏奴は活発で正義感の強いひとという印象。人の感情に敏いところなど、精神的な部分を鷗外から受け継いだように感じる。文才という面では茉莉かな、やはり。鷗外の父親像はゆるがない。子煩悩な人。その教育方針はとても好き。「お前はもっと子供の話を一生懸命に聞いて遣らなくてはいけない。大きくなるほど子供は親に何んでも話せるようにして置かないと、思掛ない間違が起きるものだ」2016/02/11
双海(ふたみ)
17
仰ぎみる文豪でもなければ、軍服に身を固めた軍医総監でもない鴎外。ここには、母や妻、子どもたちの中心となり、周囲に濃やかな愛情をそそいだ家庭人の風貌が、少女の繊細な目を通して生き生きと描き出されている。著者は鴎外の次女。父の死直前のほぼ1年の思い出を綴る「晩年の父」ほか、「思出」「母から聞いた話」などを収める。 (本書紹介より)2014/07/28