出版社内容情報
舞台は日中戦争下の大阪.市役所に勤め部落更生事業に打ちこみつつ左翼運動に関係する矢花正行と,政治運動から脱落した友人大道出泉を対極の主人公として,政治関係や社会関係,友人・女性・家族関係等が細緻に描かれてゆく.全体小説をめざし,二十三年の歳月をかけて完成した八千枚の長篇. (解説 篠田一士)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
格
1
サイコパス気味のたかり屋田口を追う出泉と、公務員という立場から同和地区内の権力闘争に巻き込まれていく正行、闇切符販売の取り締まりが厳しくなり窮境に立たされる正行の母よし江。これらの、いわばメインの物語にはそれぞれ緊張感があり、飽きずに読むことができた。ただ、本作の会話のベースとなっている流れ(ある人物がなにかを言う。それを受けた人物が「いやそんなはずはない。私にはちゃんとわかっている。」と返す)は個人的に最もストレスが溜まるものなので、この返し方を乱発する、特に女性陣になかなか好感が持てないのがネックだ。2024/09/14