内容説明
「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」。誰もが知っている昔話も太宰治(1909‐48)の手にかかったら…。親しみやすい語り口に諷刺とおどけをしのばせ、天性の喜劇作家がおなじみの説話の世界を自由奔放に換骨奪胎。作者が「世界で一ばん偉い作家」と惚れこむ西鶴の作品を踏まえた「新釈諸国噺」を併収。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
101
新釈諸国噺の方を読んだ。太宰の手にかかると、古文のような言葉でもするすると入ってくる。短い噺を少しずつ1ヶ月くらいかけて味わった。女性の描写においては、男の助平心が時にほんのり感じられるのもご愛嬌。「猿塚」が最も心に残る。あはれやなあ。歌舞伎の連獅子の舞台で合間に挟まれる「宗論」が重なる。それぞれに南無妙法蓮華経! 南無阿弥陀仏!と唱え合うのだが、それがまさに彼らの両親を思わせる。昔話では悪者扱いの猿が、愛おしく哀れで健気で……。2023/11/12
Willie the Wildcat
84
【お伽草紙】は時勢を踏まえて人々を鼓舞!といいつつ、深層心理を描写。敢えて選ぶのであれば『浦島さん』。粋な江戸っ子の亀が、うじうじ太郎を斬る!?パンドラの箱になぞらえた”忘却”は秀悦。因みに『瘤取り』の”鬼”論議の件も、酒好きの私も共感。【新釈諸国噺】は、序文に味わい。踏まえて、敢えて選ぶのであれば『裸川』。実直さが招くオチ。明るい滑稽さと複数の暗示。落語ネタにも使えるなぁと、ちとニヤリ。両作品共に、空爆も激しくなる戦況悪化の時期。著者が以前から温めていた構想を描き終えたかったという気がしないでもない。2018/08/09
ヴェネツィア
53
学生時代以来、何度目かの再読。これら2作品は、太宰の作品系列の中では、かなり異色な作品だ。いずれも、昭和20年という第2次世界大戦も押し詰まり、しだいに厳しくなった言論統制のもとで書かれている。特にお薦めなのは『新釈諸国噺』。全部で12の短篇からなるが、そのいずれもが『諸国はなし』をはじめとした西鶴作品の翻案である。例えば巻末の「吉野山」は、西鶴の『万の文反古』で試みられた書簡体を見事に取り込んだ傑作であり、「語り」の妙味に満ちている。こんな太宰もあることを是非知って欲しい。「貧の意地」、「粋人」も秀逸。2012/11/27
優希
37
日本の昔話と井原西鶴の作品を大胆に解釈しています。太宰の手にかかれば、昔の古典も親しみやすく、風刺の効いたものになるのですね。面白かったです。2025/12/29
テツ
33
誰もが知っている御伽噺を太宰が創り直した『お伽草子』の単純な面白さ。『新釈諸国噺』も西鶴による古典を読みやすく楽しみやすいショートショートへと変換してくれていて気持ちよく楽しく読める。太宰のこの手の作品を読むといつも、こういう気軽に気楽に読めるお話にウエイトを置いていれば彼の最期も違ったのかもなと思い作品内容と関係ない部分で気分が重くなりますね。何を書いたって面白いんだからもう少し長生きして色々書いて欲しかった。2018/09/02




