出版社内容情報
敗戦直後の没落貴族の家庭にあって,恋と革命に生きようとする娘かず子,「最後の貴婦人」の気品をたもつ母,破滅にむかって突き進む弟直治.滅びゆくものの哀しくも美しい姿を描いた『斜陽』は,昭和二十二年に発表されるや爆発的人気を呼び,“斜陽族”という言葉さえ生み出した.同時期の短篇『おさん』を併収. (解説 阿部 昭)
内容説明
敗戦直後の没落貴族の家庭にあって、恋と革命に生きようとする娘かず子、「最後の貴婦人」の気品をたもつ母、破滅にむかって突き進む弟直治。滅びゆくものの哀しくも美しい姿を描いた『斜陽』は、昭和22年発表されるや爆発的人気を呼び、「斜陽族」という言葉さえ生み出した。同時期の短篇『おさん』を併収。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
53
太宰の滅びの美学、堪能したく、本命本を読み始める。なんじゃこりゃ~ 思わず叫んでしまう。太田静子さんの「斜陽日記」と読み比べしみようと思ったら逸話はまんまです。蛇の卵を焼く話。風呂の横の薪置き場のボヤ、戦中の強制労働の若い将校の話。死に向かうお母さんの描写。もろに「斜陽日記」での出来事。マジ、パクッてますね。治ちゃん。そして、出た。静子さん思想のクライマックス「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」そこまでパクるか。静子さんが読んだら盗作なんて言われるんじゃない?なるほど、井伏さんが口止めする訳だ。2023/04/18
川越読書旅団
52
日本文学再考@海外出張中。時代の移り変わりに翻弄される華族の悲哀。中学時代には分からなかった感覚。日本文学を本質的に理解するには相応の年齢に達しているべきなのだろう。2016/06/15
金吾
34
登場人物たちに対してあまり現実感があるように感じられないのは育ちの違いか時代の違いか作者が上手すぎるためなのかはわかりません。ただ環境の変化に対する姉弟の違いは繊細ながらも明確でありよく読まれる話だけあるなあと感じました。2021/12/31
Fondsaule
33
★★★★☆「斜陽」「おさん」の2編。『私には、はじめからあなたの人格とか責任とかをあてにする気持はありませんでした。私のひとすじの恋の冒険の成就だけが問題でした。そうして、私のその思いが完成せられて、もういまでは私の胸のうちは、森の中の沼のように静かでございます。私は、勝ったと思っています。マリヤが、たとい夫の子でない子を生んでも、マリヤに輝く誇りがあったら、それは聖母子になるのでございます。』 かず子の変貌ぶりが見事だ。2020/04/10
東京湾
24
「私は確信したい。人間は恋と革命のために生れて来たのだ」滅びの美。道徳の革命。恋。戦後の変わりゆく時代の中、破滅へ進む没落華族と、自身の内に革命を起す女性を描く、太宰文学の金字塔。優雅で穏やかな食事の場面から物語は始まるが、そこから既に死や滅びの影が差している。破滅の象徴となる青年の直治には、太宰自身の姿が見て取れる。彼の「夕顔日誌」は何度も読み返してしまう引力があった。破滅の物語という暗い面だけが全てではなく、かず子という女性の情熱的な恋、そこには革命という灯火が確かに煌く。何度でも読み返したい名作だ。2019/06/14
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