岩波文庫
菜穂子 - 他五編

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  • サイズ 文庫判/ページ数 304p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003108925
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

透明な高原の冷気が行間に漂うような純粋さと知的な美しさに魅了される堀辰雄の作品から,処女作「聖家族」と「ルーベンスの偽画」「恢復期」の三篇と,堀文学の到達点といわれる「菜穂子」(三部作)を収めた.母と娘,生と死の主題が,緊密な構成,繊細な描写によってすぐれたロマンに構成される. (解説 源 高根)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きいち

16
堀辰雄ってこんな「総合的」な世界を創る人だったのか。◇楡の家、菜穂子、ふるさとびとの3篇で、母・菜穂子・明・黒川・おようと5人それぞれ各節の主人公として語られ、皆の時間が絡まりながら大きな一つの世界が立ち上がる。◇岩波版は初期作品から始まるので、その流れで読むと、夫・黒川の内面が語られる一節で驚きが訪れる。だって、黒川にせよおようにせよ、風立ちぬなどであれば書き割りの背景扱いだと思うもの。その思いや行動が同じ比重で描かれていくことで、この世界全体が魅力的になってきて、ポリフォニー好きの私向きの一冊だった。2013/10/18

長谷川透

16
収められた小説以上に「菜穂子」に関する覚書が大変興味深い。堀辰雄から生まれた少女の像が、彼の脳裡で次第に悲劇性を纏った大人の女性に育ってきたと覚書には記されている。小説「菜穂子」においては、悲劇――この言葉は孤独と死というもっと具体的な貌となって菜穂子を纏う――のヒロインとしての一先ずの像を彼女は得るが、明確な輪郭を持たぬ不確かな影のような印象を読中得た理由も、覚書を読んで合点がいった。理想としてはレンブラントの絵のような姿を書きたかったのだろうが、この願いの裡が「ルーベンスの偽画」を生み出したのだろう。2013/09/18

eihuji

10
「聖家族」「ルーベンスの偽画」「恢復期」「楡の家」「菜穂子」「ふるさとびと」六篇、創作ノート「菜穂子覚書Ⅰ、Ⅱ」+α。我々ハ《ロマン》ヲ書カナケレバナラヌ。二十代半ばの堀辰雄が日記に記した一行が解説の冒頭に紹介されている。なんと力強い決意に満ちている事か。十代で宿痾を負い命尽きるまでの生涯をかけた決意の結実が所謂「菜穂子三部作」と云えよう。あくまで冷徹な視線の紡ぐ物語は明らかに硬質な文体で構成されているにも関わらず温かい。2018/09/06

Kaho

7
「風立ちぬ」より完成度は低いが新鮮な空気感があり初々しい。内容は「菜穂子」彼女の寂しさ。死に向かう寂しさよりは彼女の置かれたその位置。死よりも辛いものだ。夫である圭介。彼はなんて傲慢な男か。あれでは菜穂子は可哀想過ぎる。2015/03/06

まゆこ

6
死というよりも、とても深い孤独を感じる作品でした。正直、わからないところが、まだまだたくさんあるので、また読み直してみたいです。2013/08/29

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