出版社内容情報
漱石を敬愛することだれよりも厚かった愛弟子が師の「動的な生活を動的に把握」しようとこころざして書きあげた初の本格評伝.作品はもとより各種の資料を駆使して漱石の出自から死までを細緻にあとづけ,のちの漱石研究にはかり知れぬ影響をあたえた.「系図」から「死」まで全部で七十三章から成る. (解説 平岡敏夫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
32
漱石に、高山樗牛よりも自分の方が立破(りっぱ)な、実のあるものが書けるという自信があったことは、疑いえない。しかしそのことが漱石には、自分のものを書いて自分自身に愧じないでいられるということにはならなかった(52頁)。漱石には、ロンドンの市街・風土・人間・ひっくるめてロンドンの生活そのものが、窮屈で、陰気で、殺風景で、不愉快でたまらなかった(105頁)。2015/12/09
Kaorie
4
上中巻と読んでみて、夏目先生の本や日記、書簡の引用はいいけれども、それは夏目先生の書いたものを読めばいいので、小宮さんが実際に夏目先生と話したこととか思い出が知りたいなぁと思います。ちょっと引くくらい、小宮さんの夏目先生への心酔っぷりが見て取れます。「漱石の思ひ出」にも出て来た、鈴木三重吉さんが夏目先生の引っ越しの手伝いの時に「吾輩は猫である」のモデルの猫を屑籠に入れて運んでいたら小便をひっかけられたエピソードはこの本にもちらっと登場しますが、とても微笑ましくて大好きなエピソードです。2013/02/13
けいこう
3
「再び神経衰弱」の章は漱石がロンドンから帰ったあとのころについて書いていて、妻鏡子の文章を引用しつつ鏡子を批判する。弟子小宮対妻鏡子という感じで、おかしかった。2019/05/06
勝浩1958
1
漱石が神経衰弱になったときの家族は悲惨であったろう。このように漱石が荒れ狂うのは、漱石の生まれてから幼少期までの原体験がそうさせるのではないだろうか。2012/06/05
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- 和書
- 週刊誌風雲録 ちくま文庫