岩波文庫
渦巻ける烏の群 - 他三編 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 104p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003108017
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

貧農出身の作者が,シベリヤ出兵の背後に鋭いメスを加えた日本反戦文学の代表作.雪の広野に駐屯する部隊に材をとり,絶対的権力を振う大隊長の情慾と嫉妬の犠牲となった一中隊が雪の中に全滅する経緯を,リアルな筆で描きつつ,激しい怒りと抗議をひそめている.他に『橇』『二銭銅貨』『豚群』を収める. (解説 壺井繁治)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

松本直哉

14
シベリア出兵とは今で言えば集団的自衛権の行使だったのだろうか(違ってたらすみません)。遠い欧州での戦闘に同盟国の英国が巻き込まれているという理由だけでシベリアに出征。何の大義もない。だから戦意もない。わけのわからぬまま召集された兵士らは日本に帰ることしか考えていないし、上官も酒色にうつつをぬかす。しかも敵はロシアそのものでなくその一部の赤軍やパルチザンのみで、無関係な現地の人々と日本兵はむしろ仲良くなっている。無意味な不条理な戦争で酷寒のなか犬死にしてゆく兵士たちの無惨。反戦というより厭戦の小説であった。2015/06/10

S.Mori

11
表題作は戦争を主題にした小説の名作です。ソ連で見捨てられるように死んでいった兵士たちの姿が描かれています。これを読んで、私の祖父のことを思い出しました。祖父は南方で戦死し、遺骨さえも残らなかったです。ときどき祖父の無念の思いを考えることがあります。「渦巻ける烏の群れ」は淡々とした筆致ながら、戦場で死んでいった無名の兵士たちを悼む気持ちが行間から静かに伝わってきます。2019/08/13

のり

10
付記されている、壼井繁治による黒島伝治の解説が的確かつ卓越した批評となっている。プロレタリア文学がその政治性から様々に分派し、革新的急進的論調が一方にあったなかで、黒島はあくまで見聞きしたものを感情を抑えた文体で描きとり、そこにアジテーションを加えることはなかった。この点には壺井の指摘するように黒島文学には小林多喜二との対照性が見受けられるように思う。2019/02/07

モリータ

8
青空文庫で銅貨二銭、豚群、橇を読む。わかりやすい問題意識。モノはいずれ買います。→普通に旧版の方を買ってた。記録漏れ。2016/05/23

寛理

5
☆☆☆ 「二銭銅貨」は傑作。不幸は経済的要因によるものである、という認識そのものを読者に経験させる小説。「豚群」の独特なユーモアもすばらしい。シベリアものの「橇」「渦巻ける烏の群」は気になるところがあって、日本兵の苦労を根拠にした反戦小説だが、ロシア人のことは人だと思ってないんじゃないか。壺井繁治も解説でロシア娘との心温まる恋というようなことを書いているが、娘が日本人のことをどう思っているのかは考えてなさそう。2019/08/29

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