出版社内容情報
情にもろく貧乏で意気地なしの無名の画家を主人公とし,わがままでヒステリーの芸妓上りの妻との交渉を,軽妙な饒舌体で描いた自伝的作品.二人を囲む人物もみな善良で不幸な人びとばかり.人間の愚かさと悲しさをユーモラスに描いたこの作品は,『蔵の中』とともに作者の出世作となった. (解説 山本健吉)
内容説明
情にもろく貧乏で意気地なしの無名の画家を主人公とし、わがままでヒステリーの芸妓上りの妻との交渉を、軽妙な饒舌体で描いた自伝的作品。二人を囲む人物もみな善良で不幸な人びとばかり。人間の愚かさと悲しさをユーモラスに描いたこの作品は、『蔵の中』とともに作者(1891‐1961)の出世作となった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
44
佐藤春夫が芥川をけちょんけちょんに貶して宇野をとことん持ち上げた小説。タイトルを見てどれだけの残酷さと絶望が待ち構えているのか期待したのになんてことはない。というのは、苦の世界にあえて自ら突っ込んで(引き寄せる素質もあり)不幸さえもネタにするような精神的な余裕のある匂いをどことなく含ませているからだ。文筆家の自由度が高かった大正期の和やかささえ感じることができる。2019/07/14
松風
17
面白い。重たげなタイトルだが、大真面目に語られる中身はかなりファンキー。ヒステリー妻が「苦」の代表らしいのだが、そもそも主人公の薄ぼんやり&とんちんかんぶりも大概にせえよと呆れ笑いを誘う。取り巻く人々も怪しさ満点。2014/03/14
ハチアカデミー
15
B+ 女に振り回され金策に苦しみ無為な日々を過ごす。そんな苦しいはずの日常をユーモラスに描く筆致を楽しむ。主人公に確たる芯がなく、その場その場で状況によって己の身の振り方を考える日々は先が読めず、だらだらと続いてゆく。ラストも灯火が消えるようにフっと終わる。意識の流れといえば聞こえがよいが、むしろ筆のゆくままに書き続けた、書き続けざるを得なかった作品なのだろう。「二人の話」というタイトルで発表された冒頭の「その一」は、短編として纏まりがある。ここだけでも十分かもしれない。まぁ、あとの蛇足が癖になるのだが…2012/06/28
松風
13
ビブリオバトルでチャンプ本に選ばれました。2014/10/09
月
13
★★★☆☆(本来、苦の世界であるはずなのに、作者の筆に何処か滑稽めいたユーモアがあり、それが何処か哀愁(独特の個)を醸し出している。読中、ふと、広津和郎の「年月のあしおと」(宇野浩二病む)での宇野の叫びを・・往来で家族(母と兄)を抱きかかえながらの叫び(「これだけが宇野浩二の家族だぞォ!おう!おう!おう!」)が宇野の側面として切なく思い起こされた。宇野浩二には人間的に何か堪らない妙な魅力がある。以前「蔵の中」を読み、その後、広津等を通してより深く宇野浩二を知れば知るほど・・宇野独特の魅力が増してくる。) 2013/07/17
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