出版社内容情報
昭和3年東京・大阪両「朝日新聞」に連載された.「妻」「子」「父」の3部からなる.小学校教師見並行介は教え子のきぬ子と結婚したが,妻の不貞に悩まされ,さらに生まれた子供への疑惑にさいなまれる.この深刻な悩みを越えて人類愛に生きようと努力する主人公の姿に,作者の理想主義的人生哲学をうかがうことができる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
42
すごく端正な文体とドラマチックな展開。読み始めから全く飽きさせなかった。ありがちではあるが、結婚や不倫、子育てなど、いつの時代も変わらない問題を取り上げ、直球勝負な、小説の見本だと思わせる作品。主人公はまじめだが優柔不断っぽく、最善をつくしたつもりでも、思うようにはならない。タイトルの意味がラスト10ページ近くで明かされ、なるほどそういう意味だったのか、と。2017/05/14
シロナガススイカ
11
「彼は今はじめて父だった。」/妻と子と父。/改版……、なのかコレは? Amazonから恐ろしくボロっちい裸の文庫本が届いたのだが。そしてその見た目に反してラノベかというほど台詞が多いのだが。昭和初期の作品にしてこういうものもあるのだと少々驚き。主人公が比較的落ち着いた人で、概ね考え方に同意できて共感が持てるので、内容が胸糞寄りな割には気持ちよく読めた。子供が産まれてからの心境は分かりかねるが、それまでが同情できただけに、私も「己の子」に悩まされる時が来るのかもと思ったり。びっこのシーンなんかは感動モノ。2025/07/03
まりこ
7
恋愛、教職、子供、色んな事があるが、行介がいい人で哲学的に色んな事を考える。時代も昭和初期の古さ、貧しさと豊かさがいい感じ。会話が良い。自分の子供でないかもしれない苦悩から、子供は社会の子供という思いにたどり着く。2017/05/01
Yumi Ozaki
6
DNAなんてなかった昔は母親でさえ子供の父親が誰なのかさだかでない場合があった。子供が本当にかわいそうだし、父親も・・・。読みやすい文体でストーリーもおもしろかったです。2021/07/10
本野 杜蔵
6
家族とは…ふと考えさせられる小説です。2014/04/29