出版社内容情報
雁,鳩,鶴,ひばり,……十二羽の鳥が王の御前に出ては語りだすとっておきの物語.中国・日本の説話や聖書などから題材を得て書きつがれたこの大人のための童話集は,いずれも天衣無縫,珠のように美しく磨きぬかれた作品であり,味わい深い哀愁と高い品格がただよう.作者自身がもっとも愛した短篇集. (解説 河盛好蔵)
内容説明
雁、鳩、鶴、ひばり、…十二羽の鳥たちが王の御前に出ては語りだすとっておきの物語。中国・日本の説話や聖書などから題材を得て書きつがれたこの大人のための童話集は、いずれも天衣無縫、珠のように美しく磨きぬかれた作品であり、味わい深い哀愁と高い品格がただよう。作者(1885‐1965)自身がもっとも愛した短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
92
青空文庫にて「島守」を読みすっかり引き込まれ早速「鳥の物語」を読み始める。12種の鳥達は人間の生き様に寄り添い一つ一つの物語を盛り上げる。(銀河は宇宙を貫いて永遠の夢のように流れる。波濤が狂奔して虚空に百雷の音を轟かす。その見通しもきかぬ岸から岸へとかささぎが虹のような翼の橋をかけた。(p 373)なんという美しさ!わたしも物語の中の一羽になりたい!そして人間と言葉を交わす。読書の醍醐味を又、味わった!遅まきながら素晴らしい作家発見!2021/10/17
sin
81
正しくは鳥の語る物語だろうか?我が身自由を誇る鳥たちが、権威にかしずく様は嘆息だが、自由民だと自覚する人自身、いざとなったらこれも権威に頭が上がらないのは、鳥たちのいっそ素直さを咎められる訳がない。知るものの憤慨を呼ぶ、鶯の託卵を知らぬ哀れは、知らぬその身がやくざな子に寄せる想いの宜なるかなと覚ゆるは、人の世にそれほど素直一心に騙されるほどであれば争い事は起こらないであろう;エデン!雉も鳴かずば…というよりは父が夢にも証さなければ娘も縊死せずにすんだものを、人は己れの満足には逆らえないものか?2017/03/16
yukision
61
美しい日本語で綴られた,12羽の鳥が物語を語る12の短編集。それぞれ日本や中国の説話や聖書から得られた話を基にしているらしく,初めて聞く話ばかりではなかったものの,情景描写が素晴らしくその場面が自然と目の前に浮かぶ。自分の知識の浅さにやや難解な部分もあったが,鳥のイカルが斑鳩の語源だとか,ちょっとした新しい知識が得られたのも嬉しい。2024/05/16
syaori
54
王様に物語を披露する、その語り手は鳥。雁は蘇武のために「雁の使い」として長安まで飛んだ話を、鳩は「鳩の心をそのまま自分の胸に入れた」イエスの物語をというように各々の一族にかかわる物語を語ります。話のなかで鳥たちは人間と言葉を交わしていたりして、これは「お伽話」なんだなと思うのですが、このお話のなかには作者の、無垢なもの、力のないもの、弱いものへの優しい視線があって、「この世のあらゆる善いもの、美しいもの、快いもの、やさしいもの、和やかなもの、懐かしいもの」を受け取った気持になる、宝物のように思う一冊です。2017/06/22
seacalf
53
日本にもここまで壮大で縦横無尽な創造力で美しい物語を紡ぎだせる物書きがいるのだ。自国のみならず異国の故事をも題材にしてるので、その都度足りない知識を補完しながら読むのも楽しい。鳥達の純朴な語り方が可愛らしい。人間の営みのおかしさと対比すると尚更。お姫様の窮状を救うべく天の阿弥陀様を目指して飛ぼうとするひばりがいじらしさ、仲よくしようが物事のはじまりといういかる等、ほぼ全ての話に読み応えあり。想像力の翼を自由に羽ばたかせていた子供時代の興奮を思い出させ、物語に酔いしれる愉悦に浸らせてくれるおすすめの一冊。2018/07/02
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