出版社内容情報
江戸讃美,戯作者意識,文人的な日常生活.これらはすべて,浮薄な近代化に対する文明批評家荷風の抵抗の顕現に他ならない.こうした作者の精神の内実をよく伝える随筆のうち,上巻には『日和下駄』を始めとする東京を論じたもの,下巻には実生活に基づく『妾宅』,『小説作法』等を収め,荷風文学の妙味を味わえるよう編集した.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
115
この中には代表的な随筆集の「日和下駄」とそのほかの随筆が収められています。むかしの東京のとくに下町の情緒などがかかれています。私事になりますが私の父親が市川の菅野に住んでいた頃よく風呂敷かかばんのようなもの(中には現金がたくさん入っていたのでしょうね)を持って荷風が歩いているのを見たことがあるそうです。2017/08/23
ワッピー
31
荷風と一緒に東京を縦横に歩き回りたくなり、再読。もちろんコロナ禍からの逃避ですが、初読時にはむさぼるように読んだのに、今回は没入するどころか、むしろこの本から逃避する始末。荷風が嘆くように大正から昭和初期まで東京の景観変化は相当激しかったようです。時の経過によって古い風物が失われるのは避けがたいことでもあるのですが・・・。現在の東京は時代の変遷もさることながら、コロナ不況のせいか、昨年あたりから次第に知っていた店の廃業が増えるつらい変化になってしまいました。逃避のつもりが現状と被りすぎたのかもしれません。2021/01/21
1.3manen
25
明治~昭和(帯より)。淫祠:邪神を祀った社(20頁~、広辞苑より)。青山竜巌寺の松は北斎『富嶽卅六景』中にも描けれてある(25頁)。貧しい町の光景:東京の貧民窟には竜動や紐育において見るがごとき西洋の貧民窟に比較して、悲惨な中に静寂の気が潜んでいるように思われる。怠惰、無責任なる愚民の疲労せる物哀れな忍従生活(36頁)。現代の日本人は祖国に生ずる草木の凡てに対して、過去の日本人の持っていたほどの興味を持たないようになった(266頁)。この当時の現代のみならず、平成のご時世でもいえるのではないだろうか? 2015/04/17
sabosashi
18
1. 都市はつねに変貌し、生長する。時間のなかに留まることはない。わたしたちニホン人にとって都市論といえば変貌こそがその同意語。ところがそう思い込んでいるのはとりわけニホン人なのではないか。ヨーロッパの都市にしろ非ヨーロッパにしろ意外と静態的に発展してきたものではないか。ここまでが序論。荷風は自らの脚をたよりに東京を経巡ってきた。荷風というと下町への郷愁が強いのではないかと思えるが自身はじつは山の手出身。さまざまな理由で転居を繰り返しながら半ば病める一途さでもって東京を眺める。2026/10/22
しんすけ
17
荷風にあっては墨田川もセーヌのごときものだったのかもしれない。その随筆の多くが散歩から得られる風景への感慨なのだから。 『四畳半襖の下張』なんて春本を著した荷風だから、インドアのようなイメージが浮かぶが、実際はアウトドアな人物だった。 荷風は散歩には常に雨傘を持ち、雨用の高下駄を掃いていた。東京の天候変化は激しいから、持っていたに越したことはない。 収録作品の『日和下駄』とは雨用の高下駄を指していると思われる。 荷風が東京中を歩き回っていたことはこの随筆集からも窺い知れる。2021/09/09




