出版社内容情報
誠と意地に生きる新橋の芸妓駒代は,一切の義理人情を弁えない男女の腕くらべに敗れ去る.この女性に共感を寄せる講釈師呉山や文人南山.長年の遊蕩生活に社会の勝利者への嫌悪を織りこみ,失われゆく古きものへの愛惜をこめて書かれた荷風中期の代表作.佐藤春夫は浮世絵風の様式描写があると絶賛した. (解説 坂上博一)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
64
花柳界でも近代的な合理主義や経済観念がまかり通るようになった大正初期の作品。新橋を舞台に、古風な駒代、色仕掛けの菊千代、金持芸者君竜との腕の比べ合いで、古い時代の気質を色濃く残した駒代は二人の馴染みに捨てられてしまうのだが、荷風は、駒代を捨てた男性たちを皮肉な目で描き、一方で、古きよき花柳界の姿を遺しておこうとする古手の小説家や、老いぼれ講釈師である茶屋の亭主の粋を求める姿を描く。菊千代や君竜ほどには新時代の流れに乗れない駒代を、荷風は「ものの哀れ」を感じる心があるからだとし、愛おしく思っているのだ。2022/05/01
SIGERU
32
腕くらべとは、芸者たちの生存競争。新橋という古参の花街にも、新世代の波が押し寄せる。かつての粋や意気地をとおす主人公、駒代。豊満な体と放縦な性を武器にのしあがる、菊千代ら新興勢力。客の男たちも海千山千の佞物ぞろいで、愛欲の巷に蠢く男と女の生態が、荷風の雅文によって活写される。腕くらべに敗忸した駒代の孤影は、旧世代が新世代に敗れた現実に他ならない。結末で、彼女に差し延べられる救いも、失われゆく旧世代へ作者が手向けた挽歌。しみじみとした余韻を残す。大正の世態人情を自在な筆で書きつくした、荷風中期の傑作。2022/05/07
A.T
20
荷風さん好みの芸者風情は、早くも大正半ばで失われつつあったのか。その後、昭和期の「濹東綺譚」では場末の玉ノ井に昔気質の女をみつけてシンミリしていたが、「腕くらべ」にはまだそれほどの悲壮感はなく、軽快なタッチで大正の当世男女の駆け引きを描いている。2017/07/17
まぶぜたろう
16
すんごい古い解説(坂上博一)では本書を文明批評とまとめてるし、荷風といえば「失われいく古きものへの愛惜」なんだろうが、ホントかね。文章はリズミカルに七五調で体言止め、視点がころころ変わり、どこに転がるかわからない面白さ。なぜか三人も妾を囲ってるスーパーサラリーマン(大正時代の経済感覚が謎)から、芸者駒代へ、さらに荷風本人を思わせる作家まで登場しての、抒情的なドタバタ劇みたいな、そんな話。一晩で三人の客をとる慌ただしさが素晴らしい。なので不謹慎にも思い出したのは則文先生と輝男ちゃんでありました。すみません。2026/01/15
ヒロキです
16
男女の性について、文学で書かれた本。 粋だなーと思ってしまった。 大人の風俗恋愛を見せられてる感じ。2019/10/10




