出版社内容情報
学校、家族、遊び友だちなど、堺ですごした少女時代の生活とその心情を、一少女の立場から素直に綴る知られざる自伝。大人になった晶子が記憶に残る少女の姿を描いた「私の見た少女」を併収。(挿絵=竹久夢二、解説=今野寿美)
内容説明
「私の生い立ち」は、与謝野晶子が少女時代を思い出して書いた知られざる自伝。生家、家族、遊び友だち、あるいは学校のことなど、堺ですごした幼少期の生活とその心情が、素直に、細やかに綴られている。晶子が身近に接して記憶に鮮やかだった少女の姿を描いた「私の見た少女」を併収。大歌人を育んだ時代の風景を、竹久夢二による挿画とともに深く味わう。
目次
私の生い立ち(狸の安兵衛/お歌ちゃん;お師匠さん/屏風と障子/西瓜燈籠;夏祭;嘘;火事 ほか)
私の見た少女(南さん;おとくの奉公ぶり;商家に生れたあや子さん;巴里のエレンヌさん;楠さん ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
100
与謝野晶子が自分の子供時代について語った一冊。短歌とはまた異なるこの文学者の一面を知ることができる。きめ細かで郷愁を誘う文章に、心が洗われる思いだった。どんな人にとっても子供の頃の思い出は貴重なものだ。その思い出が、この本を読むことで蘇ってくる。性格の悪い友達のことを書いた「狐の子供」のような作品もあり、子供が感じる悲しみや苦しみもきちんと書かれているので、作品自体に真実味があった。添えられた竹久夢二の挿画をじっくり眺めるのも楽しかった。2018/08/29
藤月はな(灯れ松明の火)
88
情熱の歌人、与謝野晶子が子供のキラキラしている所を描いていると思ったあなた、大間違いですよ。当時からは「ほんまにええトコのようなお嬢さんなんやなぁ〜」と思うエピソードが多くあります。しかし、それが癪なのか、そうじゃない子にお菓子をカツアゲされたり、意地悪したりしている現実も描いているからです。お歌ちゃんのエピソードは小学校の時に読んだ伝記漫画の通りでなんとも切ない。後、車夫さん達について語った章が子供の視点のまま、書かれているのが凄い。普通、大人になってから書くと肩書きなどに惑わされるのにこのままとは!2018/11/30
penguin-blue
47
もう少し所謂自伝調の「私の履歴書」モードのものかと思っていたが、いい意味で裏切られた。幼い頃の生活のひとコマを切り取った前半は大阪の大店のお嬢さんの生活をのぞかせて興味深く、よくできた少女小説のよう。情熱歌人のイメージが強い晶子がどちらかというと気弱な引っ込み思案なのに驚くが、場面の切り取り方や、友達の少女の描き方がとても瑞々しく個性的(後年書いたからかもしれないが。)。「嘘」「たけ狩」「狸の安兵衛」などがことに面白かった。後半の短歌は知っているものもあったが、選ぶ言葉の美しさに改めて惹かれる。2018/10/14
おおにし
16
3歳ころから女学生時代までの思い出や、出会った少女たちの話が集められている。後の晶子のイメージから想像できない内気で気の弱い少女時代であったようだ。どれも幼いころの思い出が克明に描かれている。ひどいいじめにあった話もあるが、悲惨な継子話をでっちあげて周りに披露するうちに自分まで泣いてしまった話や、嘘つきな同級生を豊富な知識で打ち負かす話などユーモアのある話も多い。竹下夢二のイラストも素敵です。2019/01/11
かふ
16
お菓子屋の娘で学校にお菓子を持っていってカツアゲされたとか(学校に持っていくなよ!)。友達関係もお嬢さんの「ちびまる子ちゃん」というようなとてつもなく金持ちの娘がいたり(晶子の家も裕福なんだが)、嘘つきのライバルがいたりして。少女雑誌に書かれた手記で挿絵は竹久夢二も良かった。「嘘」の継母子話は面白かった。京都の友禅屋で継母に川に洗いを言いつけられて、土砂降りの雨の日でも許されず、やがて川に流されて伏見の老婆に拾われる。そこで老婆は藁で餅(わらび餅?)を作って京都で売り出す。それが売れに売れてとか。2018/10/19