出版社内容情報
明治25年発表された「闇桜」は幼なじみの淡い恋を描いた処女作で,一葉(1872‐1896)独自の作風の先蹤をなしている点で逸すべからざる作品であり,「うもれ木」は名工の芸道精進の苦闘に可憐な恋をからませた出世作である.他に江戸文学の流れを汲んだ「別れ霜」,平安文学に擬した美しき感傷篇「暁月夜」,いずれも初期の作風をうかがうべき佳品.解説=湯地孝
内容説明
幼なじみの淡い恋心を描く「闇桜」、名工の芸術的精進の苦闘と可憐な恋をからませたデビュー作「うもれ木」など初期の代表作を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
24
「闇桜」は哀しくなりますが、小説の中でしかない美しさがあるように感じました。「暁月夜」は私のイメージしていた一葉さんと違いましたので少し楽しかったです。2023/12/13
AN
22
『暁月夜』を読了。さる深窓の美しい令嬢に恋した文学生の森野敏の恋の一抹なのだが、令嬢は恋もしたくなければ結婚もしたくないとの事。令嬢の家に庭師として乗り込んだ敏は、何とか恋心を伝えようと文を送るが、令嬢は鎌倉の別邸に行って一人暮らそうとする。彼女が恋を避けるには大きな理由があるのだが、鎌倉に行く前日に想いを伝えた敏に、令嬢は「恋とはにくきもの」と伝える。明治の子爵家ともなると、複雑な事情が出てきて令嬢の気持ちも解るのだが、敏君と令嬢の恋の行方は何とも切ない。恋のキューピッド役をする甚之助が何とも愛らしい。2021/11/07
きさき
17
★★★★☆:ロマン主義の文学としてはすごく面白いし、イメージが綺麗。ただ読みにくい。2018/11/01
ピンクピンクピンク
14
『闇桜』『別れ霜』『うもれ木』『暁月夜』の四篇。憐れの花咲く前、蕾の様な瑞々しい作品達です。一葉さんの生涯を知った先入観に過ぎないかもしれませんが、文筆で稼ごうと小説を描き始めた時期なので、劇的趣向が強くエンタメ寄りの人情物という印象を覚えます。この後彼女は貧苦を凌ぐため吉原近くに雑貨店を構え、『にごりえ』『たけくらべ』の着想を得ることになります。結果比較的にその経験が作品に与えた影響の多大さを伺い知れた一冊でもありました。2020/07/10
双海(ふたみ)
10
短篇「闇櫻」の最終行「風もなき軒端の櫻ほろ/\とこぼれて夕やみの空鐘の音かなし」がいい感じ。2013/12/14
-
- 和書
- 記憶の椅子 - 歌集
-
- 和書
- 泉アツノの白蛇霊の世界