出版社内容情報
第1次世界大戦の最中,新聞は,この書を「事実小説,現代の悲劇」などのセンセーショナルな文言をもって紹介した.若い一兵士の脱営から放浪,放火,銃殺にいたる姿が短い時間の間に実になまなましく描かれている.しかしこれは単に時代の生んだ特殊の悲劇ではなく,現代のわれわれの胸奥を震撼させずにはおかない問題作である.解説=猪野謙二
内容説明
ふとした気の迷いから脱営した若い一兵士の放浪、放火、銃殺に至る姿が、短い時間の間に実に生々しく描かれる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
日常茶飯事#1117
3
かわいそうだが愛されなかった男が、楽な方楽な方にズルズルと流されていくうちに最後は銃殺刑に処されてしまう話。うまくいかなかった犯人が放火などの事件が多い現代にも十分通じるものがある。ダメな主人公の葛藤が良く描かれている。2022/03/09
Yumi Ozaki
2
何度読んでも田山花袋の美しい文章を楽しむことができます。情景の描写、短い文章の中にも心理描写が的確で登場人物に引き込まれてしまいます。2024/03/18
meg
2
感動してしまった。 主人公のに感情移入したのかも。人の一生を一瞬のように描写している田山花袋の筆致に。 時代が変わっても、何かが共通してある。人の矛盾する醜さと美しさ。2023/03/30
Yumi Ozaki
2
些細な過ちから大それた犯罪を犯すまでに至るのは意外にたやすいものだと思えます。逃げることで解決しようとする安易な考えの結果、逃げ場のない状態を作り出してしまいます。自然の描写が美しく、逃亡中の兵士もつらいながらもこの自然を楽しんだのか、と思います。2023/01/25
愁
2
ダメな人の悲哀を書いたら花袋さんの右に出る者はいないでしょう。どうにでも生き方はあるのに何故かそれていってしまう人生。自分や親しい人達の人生も一緒に考えてみると……なんか感慨深いなぁ。2019/09/01