出版社内容情報
「自然を主(あるじ)とし,人間を客とせる,小品の記文,短篇の小説」を集めたと作者が言っているように,『自然と人生』(一九○○年刊)は自然をテーマとする散文詩ふうの随筆八七篇,小説一篇,論説文一篇から成る.漢語・漢文脈をみずみずしく駆使したこれらの名文は広く愛好されて一時代の文章の手本とされた. (解説 荒 正人)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よむよし
106
自然を素直に写生します。「心あらん人に見せたきはこの頃の富士の曙…」で始まる富士山と周辺地域の朝焼けが美しい。湘南逗子に住んでいた作者は朝6時前に起きて渚に立ち、刻々と変わりゆく富士を色彩感覚豊かに文字で写生しました。一方で「家は十坪に過ぎず庭はただ三坪…宇宙の富はほとんど三坪の庭に溢るる…」と自宅も写生していてそこに宇宙の富を発見し天の恵みとして受けとめる。こんなふうに身の回りのありふれた情景にも感嘆すれば生活も豊かに感じられるに違いない。作者はトルストイに感化された人でロシアへ会いにも行っている。2024/03/01
イプシロン
32
苦手意識のある漢語・漢文脈での記述によっているので、読むのに多大の時間を要した。だが、それに見合う深い感銘があった。蘆花は自然を礎となし、生命を尊重し平和を構築せんと生きた人ゆえ、あらゆる出来事の根源を自然に見ている。だから、彼の眼に映し出される人間たちは、悲憐に満ちていた。だからこそ心を揺さぶられるものがあった。多くの頁には自然によって湧出する瑞々しき叙情があり、その美しさと対比するように人間が描かれているだけに、涙に誘われたりした。本作は、一年にわたり毎日のように日本の風景を綴ったものなので、2019/09/03
twinsun
3
ビルや舗装道路に埋もれた昨今の環境にあっても朝日が差し込み雨土が舞い込むほどの余地があれば折々の季節の楽しみは感じられるが失われた風物や景観を本書を許に現地に足を運び今の有様のなかにもかつての残り香を確かめに行きたいと思わせるがそれもかなわぬなら折に触れて本書を読み返そう。思わず音読したくなる名調子だ。2023/02/28
鯉二郎
2
私は群馬に生まれ、群馬で暮らしているが、徳富蘆花が群馬になじみ深い作家だったことを知ったのは遅い方である。「自然と人生」を読んで、灯台下暗しとはまさに自分のことだと痛感した。「上州の山」「春雨後の上州」「香山三日の雲」など、緻密な風景描写に感動した。長年見慣れた、赤城、榛名の山なみ、伊香保の町並み、利根川に碓氷川。むろん時代が違うとはいえ、わが群馬はこんなに素晴らしい風景があるのか・・。惜しいのは古い文庫なので字が小さく、漢字も旧字体のままで読みにくい。群馬の文学を残すためにも改版発行を望む。2019/12/19
浮草堂美奈
2
図書館で借りて。四季の美しさを描く技法は見事で、癒された。だが、この人の書く小説はイマイチ。女がいいこちゃん過ぎてイライラする。2016/04/05
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