出版社内容情報
英文学者・夏目漱石の仕事がもっと読まれてよいのではないか.本書はもと「十八世紀英文学」のテーマで行われた講義であって,漱石は日本人としての主体を鋭く自覚し,また堂々と貫きながら十八世紀イギリスの作家と作品に,その社会に切りこんでいった.外国文学に関心をもつあらゆる人の必読書. (解説 平井正穂)
内容説明
英文学者・漱石が「18世紀英文学」のテーマで行なった講義。漱石は日本人としての主体性を鋭く自覚し、また堂々と貫きながら18世紀イギリスの作家と作品に、そうしてその背景をなす社会に切り込んでゆく。外国文学に関心をもつあらゆる人の必読書。
目次
第1編 序言(専門の知識;18世紀という語;文学史は科学か ほか)
第2編 18世紀の状況一般(歴史小説の例;社会的要素としての文学;その重要なる度合 ほか)
第3編 アヂソン及びスチールと常識文学(18世紀文学史の始め方;1700年を基点とする;当時の文学者の団体;スチーヴンの説明 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
31
イギリス経験論が登場することに驚きます。ヒュームの『人間本性論』を、英国人の気質に関連付けています。漱石の知識はイギリスに偏っており、相対化する研究も研究者も皆無だったと考えると、的外れと一笑に付すわけにもいきません。迂遠で焦点の定まらない話が200ページ近くあり、英語→対訳と重複も多く、本書は読む価値はありません。ただ、英米哲学が強くなり、思弁的実在論などからヒュームの再評価が行われている現在と文脈は全く異なっているが受け取っているものが同じで、相手が漱石だという不思議な感覚だけでも興味深い経験です。2020/01/20
しんすけ
4
とにかく面白い。『文学論』を読む前にこちらを先に読んでいたら、と思うと色々な想像が脳裏に浮かぶ。『文学論』は、漱石の文学ロジックを流麗な文語体で書き記したものだが、こちらは完全な口語体で書かれている。それも18世紀のイギリス文学に限定した内容である。さらに取り上げる対象は、アジソン、スチール、スイフト、ポープ、デフォーとその周辺に限られている。つまり一般的文学評論でなく、漱石が好むイギリスの限られた世界が対象なのである。2017/10/22
ウイロウ
4
単行本『三四郎』と同じ年に刊行された本書だが、『文学論』と同様に東京帝大時代の講義が基になっている。テーマは18世紀の英文学。第一編「序言」の後、第二編「十八世紀の状況一般」として当時の哲学・政治・芸術・世相等が概観される。これが結構面白くて、なるほど18世紀は意外に乱暴な時代だったのだなあと。以下本論に入り、第三編アヂソンとスチール、第四編スウィフト、第五編ポープ、第六編デフォーと続く。AddisonやSteeleなんて初めて聞くけれども、スウィフトの引き立て役として取り上げられたフシもある。(下巻へ)2015/01/29
shinano
4
このての書物へのコメントは難しいというかやり難いです。序において長々と漱石の文藝の評論観と文学史評論観が語られています。文学作品評論には客観性が当然必要なのだが、自分が読んで「どう感じたのか」の主観を核にして「なぜそう感じたのか」を徹底分析しないといけないと言ってます。「面白いんだから仕方ない」と言うなと言ってます。わたしたち凡人の読書はこの域なんですが・・・・。自分の感情の動機を探せということですね、漱石先生。漱石先生はアヂソンやスチールの世評文にはやや否定的というか評価低いのもありますね。2010/07/13
式
1
第一章で文学批評の方法論を試みるが、これはすこぶる面白いので一読の価値あり。第二章は18世紀イギリスの社会状況。かなりわかりづらいし、現代に敢えて漱石の説明に拠る必要も全く無い。そもそも漱石だってここはほとんどが当時の参考文献の引き写しだろうし。第三章は日刊紙スペクテイターを創刊して人気を博したアディソンとスティールを扱うが、そもそも全く初耳の人達で、今の英文学史では完全に抜け落ちている存在。よくわからん。以上のことから導き出される結論、とにかく第一章を読んだら問答無用で下巻の第四章まで一気に飛ばすべし!2023/08/18
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