出版社内容情報
この小説の主人公である「先生」は,かつて親友を裏切って死に追いやった過去を背負い,罪の意識にさいなまれつつ,まるで生命をひきずるようにして生きている.と,そこへ明治天皇が亡くなり,後をおって乃木大将が殉死するという事件がおこった.「先生」もまた死を決意する.だが,なぜ……. (解説 古井由吉・ 注 大野淳一)
内容説明
かつて親友を裏切って死に追いやったという過去を背負い、罪の意識に苛まれつつまるで生命を引きずるようにして生きる「先生」。と、そこへ明治天皇が亡くなり、乃木大将が殉死するという事件がおこった。「先生」もまた死を決意する。だが、なぜ…。改版。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
158
基本的な内容は他の出版社のものと変わらないが岩波ってだけで格調高く感じられるのは不思議だ。2014/01/05
安南
64
男にとって女は、語るに足る存在ではないのかと十代で読んだ時は情けなく感じたが、今回は少し違う読み方をしてみた。静は先生の告白を赦し(既に知っていた?)その寂寞にも(『門』のお米のように)寄り添うことが出来たと思う。でも先生はそれが怖かった。妻に受容されてしまえば、崇高な苦悩は緩み、童貞のまま逝ったKに殉じることも出来なくなる。心の童貞を守り、純白のままでいたかったのは寧ろ先生の方。乃木希典の殉死事件がそのことを暗示しているように思う。どちらにしても女は蚊帳の外だということに変わりはないのだが。2015/02/09
藤月はな(灯れ松明の火)
52
再読。罪に対する罰はいつか「赦し」という救いがあるからこそ、成り立つ。しかし、Kは先生を責めずに自殺したことによって先生は断罪の機会を永遠に失ってしまった。そのため、先生は一生、救われることのない罪と自分が軽蔑していたエゴイストと同等であったという恥を背負い続けて行かなければならなくなった。「未来の寂しい自分を我慢するより、今の寂しい自分を我慢したいのです」という先生の言葉を泣きながら読みました。皆、孤独だ。しかし、その絶望から救われるであろうエゴイスティックな意思の矛盾(死)と葛藤しながら生きている。2015/01/29
まさむ♪ね
49
わたしにとってこれ以上特別な作品はない。読めばきっとあの頃のやわらかい心にたどり着く。はじめて読んだのは中学のころだったか、読書感想の課題図書だったように記憶しているけどあまり自信はない、でもたしかそれは暑い夏だった。そのとき受けた青い衝撃は少しも色褪せず、今でもわたしの心を揺さぶり続けている。そうして読む度毎にその激しさを増していくようだ。どれほど見上げてもその峰はうかがいしれず、心に映し出される風景は無限にその姿形を変えてゆく、あの白い夏の雲のように。だからきょうもわたしは書物を手にとりページを開く。2015/08/16
いちろく
48
課題本。上中下の3編からなる構成。お嬢さんが先生とKに対して本心ではどの様に思っていたのか、掴みきれない部分が正直ある。お見合いや親同士が決める事が多かった当時の結婚、自由恋愛が盛んな今の世だったら、どちらを選んだのだろう?と。余談ですが、出会いからして主人公の先生に対する態度は、恋愛感情と誤解されてもおかしくない、と思ったのは私だけではなかった。下の先生と遺書は、私が人生の中で出会った最初の書簡体小説だった事も印象に残っている。再読。2017/02/05
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