岩波文庫
安愚楽鍋

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  • サイズ 文庫判/ページ数 142p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003100110
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

文明開化の東京は,なんといっても洋風でなければ幅がきかない.そこで繁昌したのが牛肉を食わせる新商売だ.そこには,粋な姐さんやたいこもち,西洋かぶれから田舎侍まで,ありとあらゆる人種が集まって勝手な気焔を上げるのだった.魯文(1829‐1894)の代表作である本書はそうした開化の風俗を,じつに巧みにとらえた,開化期風俗文学の筆頭であろう.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

areazione

9
本作は牛鍋屋のお客さんを戯画したものだ。当時は肉食へのタブー視がまだまだ残っている。そんな中で牛鍋をつつくのは「開けた」人たち。西洋かぶれの横文字遣いとは驚きだ。でもハイカラな馴染みばかりじゃない。牛肉の美味に惚れ込んだ「悪食」な人たちも結構いらっしゃる。葱はたッぷり、替わりは冷で。牛鍋屋の繁盛ぶりが聞こえてくるようで、微笑ましいです。特に面白かったのは、牛公と馬公の問答。この話だけは異質なのだが、「人気物」の牛公が、馬公に愚痴を垂れるというもの。馬公の言いっぷりが凄い(笑)。牛公もそれでいいのか?2015/03/09

還暦院erk

8
図書館本。学生時代以来の再読。江戸後期~明治初めの芸能風俗関連語の解釈が大変!でも作者自身をネタにして笑いを取るところとか、結構現代に通じるおもろい「戯作」。特に、娼妓や芸妓の語りのリアルさに驚く。これ本当に取材したんじゃないかな…。異人さんの妾になるとかも実際ありそう。ここら辺のお話は、例えばゾラの翻訳文体でリライトしたら、フランス自然主義文学の隠れたる名短編ってな感じで違和感なく読めるのではないか(←マジです)。全体に、日銭稼ぎの人々の話の方が魅力的だった。牛馬の話は別枠ね(笑)、これは必見!2019/09/09

かりんとー

6
鴎外、漱石の偉大さがよくわかる。2024/04/08

Nemorální lid

6
『士農工商老若男女、賢愚貧福おしなべて、牛鍋食はねば開化不進奴』(p.27)などと"開けぬ奴"を下に見る"開化人"気取りの多種多様な人々を『写実的に描写し、その断片的な小話を集め』(解 p.7)たものである。『開化期の世相を諷刺し、茶化してゆく』(解 p.11)著者が滑稽本の立場から明治新時代を照らしたことは、際物書きという流行追いの中で『江戸作者の最後の偉大な光輝を放つ燈台の光明』(解 p.13)となるのに十分だった。彼によって江戸からの旧伝統が終わりを告げ、新たなる伝統が"開化"していったのだろう。2019/01/08

いるる

5
(1871)滑稽本といわれる江戸時代の流れを汲む戯作文学。牛鍋屋を舞台に色んな職業の人々のひとり語りという組み立て。「牛鍋」という文明開化の象徴を中心に新しい潮流に乗れない人を笑ったり、流行に調子づく人たちを皮肉っているように思えた。当時の人たちの西洋への尊敬を知ることも出来た。この作品のみで近世と近代を比べることは出来ないけど、『当世書生気質』(1885)とは目指すところが全然違うと思った。『安愚楽鍋』から『浮雲』(1887)まで16年、読み比べて初めて小説の書き方や目的の変化を知ることができた。2015/09/24

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