出版社内容情報
江戸文芸の華,川柳の選集『柳多留』は十八世紀半ばから幕末まで刊行されつづけ,その総数は一六七篇にものぼる.うち柄井川柳(一七一八―九〇)が選句にかかわった二四篇まで約一万七五〇〇句から一九〇〇余の秀句を選び出し,懇切な注解あるいは鑑賞をくわえた.一句また一句と読み進むうちに読者はいつしか江戸の世界へと誘われる.
内容説明
江戸文芸の華、川柳。その選集『柳多留』は18世紀半ばから幕末まで167篇刊行された。うち柄井川柳(1718‐90)が選句にかかわった24篇まで約17500句から1900余句を厳選、「春夏秋冬」「世事百態」などに分類して懇切な注・鑑賞を加える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
166
柳多留は独り心の中でクスッと笑う感じで、隙間の時間に読むのがいい。《内にいる顔には惜しい御延引》《御延引古歌をならべて御たのしみ》…雨で花見が延びたのを化粧した顔が残念がっている。かるたをやればその顔も綻ぶ。兼好の「花は盛りに、月は隈なきをのみるものかは」ほど捻くれてはいないが、人が花見やかるたに気を取られている時に、わざと外した目線にほっとさせられる。《花の山昔は虎の住家なり》…藤堂の屋敷があった上野は高〝虎〟の住家だと、頭で理解してもつまらない。花見に興じる人々の横でこっそりクスッと笑う気分が楽しい。2024/04/06
しんすけ
11
「外交は観光旅行と総理笑む」 江戸時代の風流人が200年後の世界を観ての詩である。 川柳は含みあるものだが、それだけに直截的な批判よりも対象を突きさす凶器たり得る。 「芳町へ行くには和尚たちのまゝ」 現代でも京都では有名な寺の坊主たちが袈裟のままでキャバレー通いをしているそうだが、銀座や赤坂で酩酊している先生たちも同類と云えよう。 「富の場へ財布おとして笑われる」 生活費工面でギャンブルしたものの、かえって借金が増えている現代人も似たようなものだ。2019/06/17
garyou
3
一句一句解説を読みつつ(解説のないものもあるけれど)、解説がないと味わえない句というのはやはりどうも論理的に読んでしまうものなのだなあと思ってしまう。もっと見た瞬間に「ふふっ」とか思ってしまう句だといいのにと思うが、それにはいまとは風俗というかが違いすぎていて、なあ。句またがりが結構多い印象。2023/05/22
壱萬参仟縁
3
江戸の川柳。今は冬なのでそこから。七福神関係で、200番「正直などろぼ大黒ばかぬすみ」(50ページ)。脚注によると、木彫大黒像を歳の市で盗むと縁起がいい、と。盗んでで? 202番のでは間違えて恵比須様を盗んだ句。吉原の部分では、458番「そうはいはふが小短く書きなさい」(103ページ)の脚注には、要点だけを書く旨、遊女から客への無心、と。770番「囲れは言ひ訳ほどの見世を出し」(167ページ)脚注では「世間の目を誤魔化すために、どうでもいいような店を出して、それで生活しているように装っている」と。ほほぅ。2012/12/18
Ucchy
2
多様な川柳を収録。川柳というと機知に富んだ巧妙な言が想像されるが単なる嘱目の句も多い。私は嘱目の句が好き。また、当時の暮らしや習慣が分からないと分からない句がかなり多い。遊廓関係が多い。『誹風柳多留』は岩波文庫全4巻だが私にはこの名句選で十分。「歌かるたにも美しひ意地が有」「紙雛に角力とらせる男の子」「燕は梵字のやうに飛んで行」「道問へば一度にうごく田植笠」「借物と見たはひがめか金屏風」「裏表ある水茶屋ははやるなり」2019/01/27