出版社内容情報
与三郎,お富の物語は事実談があり,それを講釈にして高座ではやっていたものを脚色したもの.8代目団十郎が切られ与三を演じ,大当りをとった.ことに3幕目の玄冶店(げんやだな)は「ゆすり場」の代表とされ,「しがねえ恋の情が仇……」の台詞は広く人びとに親しまれている.全9幕.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とみぃ
3
お富・与三郎はあまたの芝居カップルの中で、一、二の知名度をほこっているように思う。かく言う私も、その名を耳底にとどめており、それには言わずもがな春日八郎の大ヒット曲「お富さん」(1954)の影響が大きかった、というかすべてだった。読書メーターのニックネームのこともあって、「お富さん」の響きに何だか縁遠からぬものを感じてもいた。そんなこんなで、遅まきながら読んでみたのだけれど、えっ! ここで終わり、みたいな。なんだかんだあって、いざ鬼退治ってところで、終わっちゃった。あらためて、近世期の作劇術、ウケる。2018/06/20
shellgai
2
コクーン歌舞伎を観た後で読み終わりましたが、補綴の木ノ下さんがこれだけ長い話をうまくまとめて、しかも最後は原作と違った見事な結末に持っていったんだなあと感心しました。コクーン歌舞伎ではなく古典のやり方でも普段出ない場面を観てみたくなりました。2018/05/31
garyou
1
團十郎の与三郎、先代雀右衛門のお富で伊豆屋店先の場を見たときは源氏店のすぐ後で、なんでそんなに与三郎がうらぶれているのかよくわからなかった。今回読んでそのあたりの事情がはじめてわかった気がする。普段出ない場も読んでいるとおもしろいが実際に芝居にすると「宝物の紛失、よくあるよね」で終わってしまいそう。くり返し上演して様々な役者の工夫がこらされた場面だけが残るのかもしれないなあ。与三郎の夢の部分はそこだけ独立させて舞踊仕立てにしたら案外いけるのではあるまいか。2018/10/18
絶間之助
1
コクーン歌舞伎では源氏店以外の場も演じるとのこと。普段、歌舞伎では見たことがないので、積読であった原作を読みました。真鶴の香炉を巡るお家騒動、全9幕の長編。源氏店も面白いけれど、赤間別荘の浮気の場面、与三郎が切り苛まれる残酷シーンにはドキッとさせれらました。後半は良い人が次々に殺されるし、金や香炉が行ったり来たり。南北の世界に似ていますね。番頭の藤八も只の助平じゃなかったのね。九幕目の観音久次の行動にもびっくり。長編でも飽きずに読めて面白かった!さて、コクーン歌舞伎ではどの様に料理されるのか、楽しみです。2018/05/15