出版社内容情報
江戸時代後期の学者尾崎雅嘉(一七五五―一八二七)が著した異色の『百人一首』注釈書.一首ごとに行きとどいた評釈がほどこされているのは言うまでもないが,歌人一人一人にまつわる興味ぶかいエピソードがふんだんに添えられていて,雅趣あふれる読物となっている.放浪の画家大石真虎えがく百余の挿絵もまた楽しい.
内容説明
この書物の面白さは何といっても作者をめぐる豊富なエピソードにあるが、その典拠は『源氏物語』をはじめとして『伊勢物語』『枕草子』『土佐日記』『蜻蛉日記』『明月記』等々、驚くほど広い範囲にわたっている。ページを繰るにつれて、江戸人の教養の底力がひしひしと伝わって来るかのようである。巻末に便利な各種索引を付した。
目次
能因法師―嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり
良暹法師―淋しさに宿を立ち出でて眺むればいづくも同じ秋の夕暮
大納言経信―夕されば門田の稲葉おとづれて芦のまろ屋に秋風ぞ吹く
祐子内親王家紀伊―音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖の濡れもこそすれ
権中納言匡房―高砂の尾上の桜咲きにけり外山の露立たずもあらなむ
源俊頼朝臣―憂かりける人を初瀬の山おろしはげしかれとは祈らぬものを
藤原基俊―契り置きしさせもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり
法性寺入道前関白太政大臣―わたの原漕ぎ出でて見れば久方の雲居にまがふ沖つ白波
崇徳院―瀬を早み岩にせかるゝ滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
源兼昌―淡路島通ふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚めぬ須磨の関守〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
26
天保4年刊。当時の図版が載っています。これ、古典の教科書に載っていたらおもしろいし、理解の助けになるかも。2015/07/18
Shosei
2
崇徳院と後鳥羽院の悲劇。本書では保元の乱に敗れ讃岐へ流された崇徳院、承久の乱に敗れて隠岐へ流された後鳥羽院のエピソードが事細かに語られます(保元物語や吾妻鏡等から採ったようです)。かと思いきや、能因法師の話「能因は極めて小食なる人にて…菜は食せずして僅かに飯ばかりを食われしかば、兼房怪しみて食事の時うかがひ見るに…懐より紙に包みたる物を取り出でて、飯に加へて食せられたり。粉の如きものなりしが何物にか…」等という楽しい逸話もあったり。百人一首のみならず歴史の本道からトリビアまで学べる極上エンタメ本でした。2021/09/20
狐狸窟彦兵衛
1
下巻も読了。江戸時代とはいえ、古文なのでなんとか通読したという感じです。詠み手のエピソードがふんだんに書かれていて、百人一首の「奥行き」のようなものが理解できた気がします。それにしても平安時代の歌人、貴族って、本当にみんな親戚なんですね。2024/05/23
wisewise
0
百人一首の読み手のエピソードが楽しく興味深く読める。2012/08/25