出版社内容情報
滑稽本の代表的作家たる十返舎一九の二十八歳から三十五歳までの八年間の苦心の作であり,彼の名を不朽にした傑作である.恬淡にしてしかも虚栄にみち,強がりではあるが実は臆病な江戸ッ子の特性をもった弥次郎兵衛,北八が伊勢参宮,大和めぐりと旅をする間に起る失敗談などを,おもしろおかしく記した滑稽小説.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
317
江戸期最大のベストセラーにしてロングセラーの膝栗毛。発端は、全体の中ではやや浮いた感じもするが、最初に弥次郎兵衛と喜多八の人物造型を固めておきたかったのだろうか。二人の東海道の道中を描くロードノヴェルであるから、作家にとってはマンネリの怖れが常に付き纏っただろう。それには各宿場での名物ものの紹介などでしのぎつつ、逆にはその都度新たな人物を登場させるという利点もあった。また、当初は純然たる戯作のつもりであっただろう。そのことは、本書が狂歌を散りばめた歌物語の構想をとっていることからもうかがい知れる。2024/09/18
新地学@児童書病発動中
140
最高に楽しかった!これまで読んだ本の中で一番笑ったと思う。ちょっと大げなさな言い方をすれば、1ページに1回は笑える。朝起きた時に少しずつ読んだので、毎日を楽しく愉快に始めることができた。弥次さん喜多さんの道中記で、くだらない話が途切れもなく続いていく。下ネタや駄洒落も多い。古典文学なのに雅な『源氏物語』などとは雲泥の差があり、下卑た描写も出てくる。それでも私がこの小説を素晴らしいと思うのは、登場人物達がよく笑うところだ。弥次さんと喜多さんはよく笑う。自分たちの失敗も笑い飛ばす。(続きます)2018/08/24
ykmmr (^_^)
100
いわいる、『やじさんきたさん』。化政文化の舞台の江戸にて、自分たちの生活に行き詰まった親分と舎弟のコメディ的旅日記。あちこちで、現地の人の話に足を突っ込んだり、自身もトラブルを起こしたりするトラブルメーカーなのだが、その場所での事を狂歌(←化政文化生まれ)・漢詩・法律本まで作れてしまうという、実は…。みたいな一面もある。やじろべえのようにゆらゆら揺れながらも、ぶれない。そんな感じの旅日記。2021/11/18
やいっち
84
麻生磯次校注の本書は1973年の刊。吾輩は、新潮の文学全集版で1995年に初読。何故か未だに印象に残っている。旅どころかちょっとした旅行も難しい今だからこそ、読み返したくなった。十返舎一九の二十八歳から三十五歳までの八年間の苦心の作。今とは時代が違うとはいえ、一九 若い! 江戸ッ子の弥次郎兵衛と北八コンビの道中滑稽談。駄洒落など言葉遊びが満載。折々の狂歌が抜群。源氏物語もだが、物語の中に歌を織り込むのは日本独自のスタイル? さて、先を急ぐので、今夜にも下巻へ。2021/09/17
syaori
45
厄落としに伊勢参り、ごぞんじ弥次喜多道中記。日本人なら誰もが知っているこのコンビがこんなにどうしようもない二人組だったとは!! 旅の途中の謎の掛け合いや五右衛門風呂の底をぶち抜く顛末もなども脱力ものですが、女と見れば巡礼だろうが瞽女だろうが見境なくものにしようとして失敗したり、見栄と下心から騒ぎを起こしてばかりで本当にどうしようもないのに不思議と憎めない二人。苦笑いで見守る道中の旅心を、宿引きや馬士の呼び声、さらりと配される名物、くだらなくも気の利いた二人の狂歌が盛り上げます。桑名着で上巻終了。いざ下巻!2017/02/07