出版社内容情報
馬琴の戯作は一生を通じて大小300種余にのぼるが,歴史小説の中で最初に手がけたのがこの弓張月である.本書は,源為朝の数奇な運命をたどる一代の起伏を細叙する.晩年の諸傑作ほどに円熟してはいないが,気魄の強い点ではむしろ後者に優るかと思われる.馬琴はこれを一期の出世作として,爾後永く江戸の読書界に雄をなした.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
6
楽しかったです。為朝は琉球の騒乱をおさめ、最後は嫡子舜天丸ほか、子孫の繁栄を謳って、大団円です。琉球の起源を神代までさかのぼって解き明かしたり、最初のほうに死んだ乳母子の話が絡んできたりというストーリーテラーっぷりはさすがでした。物語が進むにしたがって、蛇の化身の幻術使いが敵になったり、死んだ妻の魂が王女様の体のなかに入ったりと、どんどん話が大きくなっていくあたりは少年漫画のようで、最後までワクワク、ドキドキさせてもらいました。馬琴先生ありがとうございます! 2015/11/23
ミコヤン・グレビッチ
3
(中巻の感想より)興味深い。印象に残ったのは、すべての戦いが終わってからの話。為朝とその妻で琉球王朝の血を引く王女と舜天丸が譲りあい、誰も王位に就かないなかで、漁民の献上品が三人の間でタライ回しにされ、これはいかんと為朝と妻はそれぞれにある行動に出る。詳細はネタバレになるので触れないが、読み手の涙を誘いつつ、物語の雰囲気を壊すことなく締めている。今回手に入れた岩波文庫は、昭和4年の版を1990年にリクエスト復刊したもの。活版印刷なので活字が転んでいるところも数カ所あり、印刷による紙面の凹凸にも感激した!2022/09/06
小心
0
一日一話ずつのんびりペースで読んでいたけれど、昨日は下巻の59回~68回まで一気読み。伊豆や九州、沖縄の地名がバンバン出てくる。馬琴は相当取材旅行とかしたのかな・・・と思ったら、先日のテレビ番組によると彼は家から出ないでずっと話を書き続けていたとか。一息ついたら「南総里見八犬伝」にも挑戦してみようか。 2022/11/06
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