内容説明
荒ぶる先帝の怨霊、命を賭した義兄弟の契り、帰らぬ夫を待つ妻の悲しき末路、男にとりついた蛇性の女の執念…。中国や日本の古典をさまざまに取り入れ、美しくも妖気ただよう作品に仕上げた上田秋成(一七三四‐一八〇九)の珠玉の短篇集を、厳密な本文校訂、平明な注と解説で。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
115
岩波文庫に収められていなかったのが不思議な気がします。私は子供のころからリトールドされていたこの本を読んでいたので、註を見なくても比較的すんなり読める気がしました。またそのまま音読しても非常にいいテンポのような感じです。昔の挿絵などがところどころにあるのもいい感じです。2018/03/17
藤月はな(灯れ松明の火)
108
昔から子供版やアンソロジーなどで慣れ親しんでいた「雨月物語」が岩波文庫で登場。序文の漢文で「雉雊竜戦」が読める所か、意味も分からずに疑問符が浮くも次のページで読み下し文と意味の注釈が記されているという親切設計です。しかし、「仏法僧」は記憶に残っていなかったので読めて新鮮。何度、読んでも「吉備津の釜」の正太郎の外道ぶりに呆れ果てるしかない。そして「菊花の契」は原文の方が腐の匂いが強いぞ!約束を守った赤穴が酒を厭った理由や寝食も忘れ、微睡んでも赤穴の事を想い、泣き、富田の大城に向かった左門の愛の深さが切なさよ2018/03/27
藤月はな(灯れ松明の火)
83
再読。「日本の夏はやっぱり、怪談 和編」参加本。「浅茅生」の碑に記されていた歌。そこに籠められていたのは約束を違えて帰ってこなかった夫への愛と恨み、そして薄情な夫を信じて一人、侘しく朽ちていくだろう自分への憐憫と自己嫌悪だった。思わず、小林正樹監督の『怪談』でこの作品を基にした「黒髪」を観てしまった。一方、「蛇性の淫」は真名子のトラブルメーカーぶりに唖然としてしまう。そして「夢応の鯉魚」と同様、自分の徳の高さを鼻に掛ける坊さんは碌な目に遭わないんだなぁ・・・。2021/07/10
HANA
70
江戸怪談の最高峰、何度目かわからない程の再読。現代語訳も良いが本書の様な原文もまた良し。自分の知識ではわかりずらい箇所も何ヵ所か見受けられたものの、全体から醸し出される雰囲気が神韻縹渺といった趣で読んでいてうっとりしてしまう。馴染みの無かった「仏法僧」と「貧富論」も改めて読み返す事が出来たし。他にも「蛇性の婬」のはたた神のように鳴る箇所や「吉備津の釜」の虫の叢にすだくばかりという表現、「菊花の契」の中国の故事等、細かい部分で気に入る箇所多し。雨霽れて月朦朧とした話の数々、やはり読んでいて魅入られました。2018/03/05
キジネコ
41
怨霊になっても祟ってやるって崇徳院と西行の話も怖くないんですね。生と死が今なんかに比べて 凄く近くて なんか交流もあって西行さんに意見されてヤンゴトナイ上皇さんも反省したり…その場の空気を想像してホッとしたりね。偉い御坊さんが鯉になってスイスイ泳いでてオナカすいたんで、いかんと思いながらも針のついた餌に食いついてしまう御話とか。実に楽しい御話で… 自由で大らかで 大変ケッコーな御手前でございました。2024/08/14