出版社内容情報
「東関紀行」は承久役後21年,「海道記」は同役後2年,当時政治の中心地であった鎌倉へ下向した両著者の東海道紀行である.前者が各地の風物・故事を淡々と叙しているのに対して,後者はほとんど全紙面にその人生観を披瀝している特色も興味が深い.本版は,東関紀行は群書類従本,海道記は前田侯爵家蔵古写本を底本とした.
感想・レビュー
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山崎 邦規
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東関紀行と海道記という二つ紀行文を採録している。風景を歌に詠んで楽しみを成しているのは、私にも通じる点であり、共感を寄せていた。一方で、海道記では、仏教の教養を発揮して、世俗社会を諦観しているが、その言葉一つ一つが言わばアヘンであり、大言壮語の快感のようである。我々現代人は早々に諦めるよりも、現実を操作して、例えば服薬して病を治し、機械の運転をマスターして移動範囲を広げるとか、よりよい生活を実現する努力を重んじる。それでも、現実がどうにもならず諦観の修行をするか、現実の騒動に対処するか、道は一つではない。2023/08/23