出版社内容情報
佐渡金山をユネスコ世界遺産に登録すべく、国・自治体をあげた取り組みが加速している。しかし、そこが古から過酷な労働の場であること、とりわけ戦時の朝鮮人が苦しんだ「負の歴史」を否定する声がその伝統賛美を後押ししている。埋もれかけた貴重な史料や戦後の証言から、鉱山に生きた人たちの苦しみを活写する。
内容説明
佐渡金山を世界遺産にと、国・自治体をあげての取り組みが加速している。しかし戦時、朝鮮人が苦しんだ土地という「負の歴史」は否定すべくもない。動員された朝鮮人の名簿や争議の記録など貴重な第一次史料や労務係、被害者の証言から、労働の実態を描き出す。
目次
第1章 近代の佐渡鉱山と朝鮮人の動員(新潟県での朝鮮人連行;近代の佐渡鉱山 ほか)
第2章 史料からみた強制労働(「産業報国」「決死増産」;坑内への集中配置・強制貯金 ほか)
第3章 煙草配給台帳の朝鮮人名簿(相愛寮煙草配給台帳の内容;慶北蔚珍郡徴用者名簿 ほか)
第4章 証言からみた強制動員(朝鮮人動員被害の調査;動員被害の証言)
第5章 強制労働否定論を問う(強制労働否定論;『佐渡鉱山史』を読む ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふら〜
4
戦前期の朝鮮人による佐渡鉱山労働の一側面を表した本。強制労働の考え方は論争があるとのことだが(無かったと主張する側の話も見ないといけないが)鉱山労働自体が過酷ということもあり、中々実際問題厳しかったことがわかる。世界遺産登録反対のロジックはいまいち腹落ちはしないが、ともあれこういう地域史に焦点を当てた本というのも面白いものである。2022/12/14
みさと
4
日本政府は佐渡金山をユネスコの世界遺産候補として推薦しているが、「見せたいところ」だけを見るのか、「見せたくないところ」も含めてすべてを見るのかを問う。戦争をなくすために心の中に平和の砦を築くというユネスコの理念に従えば、負の歴史から学ぶことこそが同じ間違いを二度と起こさないための遺産になるのではないか。佐渡鉱山の、特に近代以降の朝鮮人労働の負の側面を、残された史料や生存者の証言から考察する。戦時増産の国策に従い、組織的に朝鮮より労働者を動員して日本各地に連れてきた日本の戦争政策を問い直すきっかけになる。2022/11/11
takao
2
ふむ2022/12/05
なすち
0
問題を無かったことにするのではなく記録を明らかにすることで胸を張って世界遺産へ推薦できるようにという主張が印象に残った2024/05/04