出版社内容情報
なぜ開催してはならなかったのか。オリンピックおよびIOCによって歪められるスポーツと、犠牲を被るアスリートの姿。そしてわれわれ市民に遺された有形無形の負の遺産を徹底追及。東京2020を「終わったことにさせない」ため、オリンピックの問題性にいち早く警鐘を鳴らし一貫して批判を続けてきた研究者が総括する。
内容説明
問題は多かったけど、選手たちは頑張った…そんな「スポーツの力」は免罪符にさえならない!オリンピックの誤魔化しと偽り、そして遺された負債とは。スポーツからは自由を、アスリートからは尊厳を、そして社会からは富を略奪することで続いてきたオリンピックに、はっきり「いらない」を告げるために。強行された2020年東京大会、そして近代オリンピックの本質的問題を徹底的に批判する。
目次
第1部 オリンピックからスポーツを解放する
第2部 オリンピックを捨て去る
第3部 それでも残る負債
著者等紹介
小笠原博毅[オガサワラヒロキ]
1968年東京生まれ。神戸大学教授。専門は文化研究。サッカーと人種差別、および18世紀初頭の海賊たちを主なテーマとして研究を続けている
山本敦久[ヤマモトアツヒサ]
1973年長野市生まれ。成城大学教授。専門はスポーツ社会学。スポーツの権力とアスリートによる支配への抵抗表現を主なテーマとして研究を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こも 零細企業営業
27
マイナースポーツがオリンピックに採用されても、そのスポーツの根底にあるモノを壊してるらしい。例えば冬の五輪のスノーボードのハーフパイプ。カッコよさ、楽しさを追及していたのに。オリンピック競技になってから高難度の技を規定通りにする競技に変わってしまったらしい。新しい技も出て来ない。根本的な話。スポーツによる平和、平等とは一体何なんだろか?政治的な事を選手に禁じるわりには政治家達は政治に利用するし税金も投入される。そんな平和の祭典と呼ばれる五輪。スポーツ=平和とはどう説明されても納得出来る言葉は出て来ない。2022/02/25
青雲空
6
オリンピックには終始反対で、一切観なかった。私的にはオリンピック・フリーは簡単だったが、社会としてオリンピックを無かったことにはできない。負の遺産が貯まりまくっている。にもかかわらず、次はサッポロという愚か者が居る。 明確に反対しておられた瀬戸内寂聴さんもドナルド・キーンさんも亡くなられた。今の惨状をどう見ておられるだろう?2022/05/22
みさと
5
オリンピックに反対する論者が放つ根源的な批判。「ぼったくり男爵」IOCによる巨額経費は、開催国・地元の負債として重くのしかかる。スポーツに政治を持ち込ませないと言いながら、抑圧を訴えて人権を訴える黒人や女性アスリートの抗議行動を認めない政治性を発揮する。スケボー、スノボーのような、自由な表現を重んじるスポーツを、五輪種目とすることで、ルールでがんじがらめにした勝利至上主義のものへと変質させてしまった。スポーツからは自由を、アスリートからは尊厳を、社会からは富を略奪するオリンピック、そろそろやめませんか。2022/02/08
keepfine
4
スポーツ、五輪が社会とは隔絶したパラレルワールドでの出来事であるかのように扱うのは誤り。森発言、佐々木のセクシズムなど性差別、スタジアム建設中の過労死、コロナ病床の逼迫などの諸問題が五輪と無関係であるはずがない。アスリートファーストは社会に対する皺寄せと表裏一体。そもそも五輪の父クーベルタンが性差別主義者であったし東京五輪のトラブルが発生するにつけて「五輪の理念に立ち返れ」という批判が起きていたがこれ自体が誤り。五輪の有害性を論じる者があまりに少ない。2022/11/18
ぴっちゃん
4
世界の一流スポーツ選手のパフォーマンスを観るのは楽しい。しかし昨年の東京五輪ではTVにくぎ付けになりながらもこれで良いのか訝る気持ちをぬぐえなかった。この本では約60Pの短さでパンデミック下という今回特有の問題と、東京五輪招致の際の欺瞞のほかに、オリンピックの抱える根源的な問題までもわかりやすく論じられている。ボードが五輪競技になることで失われたものがあることは知らない人も多いと思うので、この問題は広く提起してほしい。そして今回明らかになった様々な問題を解決しないまま別の五輪招致はやめてほしい。2022/06/25