内容説明
間違った方向で進めると、公教育の信頼失墜、格差の固定や疎外感を抱く子どもの増加にもつながりかねない英語教育改革。グローバル化に踊らされず、多言語・多文化社会で本当に必要とされる力を育む授業とはどのようなものか。英語力ではなく、子どもを育てるのだということに立ち返りつつ、小学校から高等教育につながる英語教育のあるべき姿を保護者や教師と一緒に考える。
目次
第1章 英語教育の現状(ことばが身につかない「引用ゲーム」;トレーニング中心主義による情感の剥奪;英語指導の実態の理解不足)
第2章 実施計画の危うい基盤(数値目標による管理;客観試験への過信;浅薄な「グローバル化」概念)
第3章 小学校からの英語教育再創造(確かな芽生え;身体実感を信じて)
著者等紹介
柳瀬陽介[ヤナセヨウスケ]
1963年生まれ。広島大学大学院教育学研究科教授。博士(教育学)。専門は英語教育学
小泉清裕[コイズミキヨヒロ]
1951年生まれ。昭和女子大学附属昭和小学校校長。専門は英語教育。幼稚園から大学院まですべての部門で英語教員の経験あり(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
22
高校英作文は大学受験用に、減点されないための受験テクニックの授業である。それでは、自分の気持ちに英語を乗せる経験を日頃から積んでおかないと、自分のことばとして英語を語れません(8頁)。英作文こそクリエイティブなものだが、試験のための英作文では真の発信型になれないように思われる。英語教育の教育の面が軽視されているという問題があるようだ(17頁)。教育力ある英語の教員こそ求められるゆえん。2015/06/20
Nobu A
7
前回は割高感を感じた岩波BLシリーズ2冊目。僅か60頁に定価520円を決して高いと思わせない濃厚本。専門家2人が英語教育の現状を概観し、英語が出来るイコール世界で活躍するグローバル人材と安易に結びつける象徴資本に警鐘を鳴らし、小学校での英語教育は内的動機づけに重きを置き、小学生の学びと生態に関わる身体実感を指針にすることを提唱。言語学、教育学、言語心理学の大御所の理論を平易な言葉に落とし込み、絵のような明快な解説。実践事例も紹介され、私淑したくなるような教育者。このような論考がもっと流布されればと願う。2018/11/26
すがの
4
かねてから興味があったテーマ。「引用ゲーム」を脱して「身体性」に訴える授業が求められている。また、英検やTOEIC、TOFLEなどのテストという外部目的ばかりを押し出すと、学習者の内部から生じる「内発的動機付け」をそぎ落としがちであるという指摘も重要である。2015/03/09
カヤ
2
英語と日本語以外の言語にも目を向けさせてほしいという記述が良かった。多言語、多文化への関心を育むのが目的で、英語はその入り口って考え方で動きたい。2018/09/29
アトム
2
何年かぶりに英語教育の本を読んだ。最初はグローバリズムの中できれいごと過ぎると思ったが、だんだんと著者の言うことにうなづけた。「引用ゲームとトレーニング中心主義の行き過ぎを警戒し、身体実感を指針に・・・」2015/06/08