内容説明
大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という「三本の矢」を掲げて始動したアベノミクス。株価の上昇や円安の進行など、その効果が叫ばれるが、はたして実態はどうか。そして、私たちの暮らしにどのような影響を与えるのか。様々な経済統計を丹念に分析し、アベノミクスの矛盾と危険性を指摘。日本経済や人々の生活を立て直すための政策を考える。
目次
第1章 アベノミクスはなぜ問題なのか?―日本経済の長期停滞の原因を考える
第2章 アベノミクスは成功しているのか?―「第一の矢」「第二の矢」の効果を検証する
第3章 アベノミクスは何をもたらすのか?―「第三の矢」が暮らしを危険にさらす
第4章 日本経済と暮らしのゆくえを問う―アベノミクスと逆発想の政策へ
著者等紹介
山家悠紀夫[ヤンベユキオ]
1940年生まれ。神戸大学経済学部卒業後、第一銀行入行。第一勧業銀行調査部長、第一勧銀総合研究所専務理事、神戸大学大学院経済学研究科教授を経て、2004年「暮らしと経済研究室」を開設(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こばまり
37
安倍首相の所信表明演説然り、政府発表報道然り、いくら読んでもピンと来ず焦っていたのですが、アベノミクスはそもそも中身がなく支離滅裂であるとの本書の指摘を読み、自分の読解力は証明されたものの、暗澹たる気持ちになりました。2014/10/29
壱萬参仟縁
31
アベノミクスの特徴:非科学的政策、思想混在政策、現状認識が誤った政策(6頁~)。つまり、いくら素材がよくても、ただ混ぜてしまえば美味しい料理はできる筈はないのである。最も問題なのは、アベノミクスは暮らしに目を向けていない点(20頁~)。全くの同感。ラジオニュースでも大学生の仕送りは14年連続で下落というのも同様に思われた。株高と円安効果は’13年5月までで出尽くしたという(33頁折れ線グラフ)。GDPが落ちたために投資が落ち込んだ(47頁)。 2015/04/19
ゆう。
18
日本の7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が2四半期続けてマイナス成長となり、景気が後退していることが明確になりました。アベノミクスは国民の暮らしの向上には役に立っていないことを示しています。この本では、「世界で一番企業が活動しやすい日本」とするためのアベノミクスが、雇用や所得など、国民生活を犠牲にして成り立っていることを学ぶことができます。大切なのは国民生活を支える施策なのです。読みやすく、良書だと思います。2014/11/18
乱読家 護る会支持!
4
ひたすらにアベノミクスを否定する本。アベノミクスにより悪くなっている数字をあれこれ並べてダメ出しし続けます。では、どうしたらいいの?って思い読み進めると、、、あった最後の数ページ。①非正規雇用の規制緩和、②最低賃金の引き下げ、、、、まあ、批判の為のデータ作りをいくらしても、創造性を刺激しないようです。さすが岩波!(u_u)チーン!2015/01/16
とくべい
4
岩波ブックレットの一冊なので、一気に読める。アベノミクスの特徴とそのゆくえを明快に解説。日本経済の低迷はバブル経済の「崩壊」からではなく、正確には1998年以降であること。低迷の要因は何よりも国民の賃金が下がり続けていることにあると、経済データから分析。アベノミクスの三本の矢は、賃下げによって生じている国内消費の低迷の打開にはつながらず、よりいっそうの深刻化を招くと、アベノミクスの危険性をわかりやすく説く。2014/10/16