内容説明
橋下現象とは何だったのか。安倍自民党の「圧勝」で進行する「熱狂なきファシズム」とは―。政治への無関心が社会を覆う中で、民主主義そのものが崖に向かって行進している。いま必要なことは、当たり前に享受してきた「自由」や「権利」の意味を私たちが自ら問い直すことではないか。『選挙』『精神』などのドキュメンタリー作品で注目を集める気鋭の映画作家が、日本社会の直面する危機を鋭く描出する。
目次
第1章 言葉が「支配」するもの―橋下支持の「謎」を追う
第2章 安倍政権を支えているのは誰なのか?
第3章 「熱狂なきファシズム」にどう抵抗するか
著者等紹介
想田和弘[ソウダカズヒロ]
1970年栃木県足利市生まれ。東京大学文学部卒業後渡米、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアルアーツ映画学科卒業。93年からニューヨーク在住。NHKなどのドキュメンタリー番組を40本以上手掛けたのち、台本・ナレーション・BGM等のない、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの手法で『選挙』(2007)を完成させる。同作は世界200カ国近くでテレビ放映され、アメリカでは優秀なテレビ番組に与えられるピーボディ賞を受賞、各地の映画祭でも高い評価を受けた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
26
感想文が多いのは良書の証拠。橋下氏のフレーズを事例に、支持者を拡大していった経緯がある。しかし、産む機械とか言っていた柳沢氏のように、女性の敵のような発言をしては、彼の人気もこれまでではとも思わされる。TPPに対する著者の考えは正しいと思う。アベノミクスも海外投資家の動向に影響され、実体経済である地域経済の景況感まではかなり距離感がある。消費者が王様かもしれないが、増税されては金持ち消費者だけが頼りか。主権の意味が問われている。誰にとって暮らしやすい社会がよいのか。誰にとっても快適な社会を実現するために。2014/02/07
世話役
18
100頁にも満たない薄い本だが、いまこの国が抱えている民主主義の危機が克明に綴られている。著者は自身が権力側の圧力に事なかれ的発想で屈しそうになった経験から「もしかするとこうした小さな“不戦敗”がこれまでにも社会で積み重ねられてきたからこそ、いま僕が直面しているような事態が生じているのではないか」と推察している。全くその通りだと思う。ぜひ読んで、考えてほしい。自身を政治の素人と位置づけ、政治について主体的に考えることを避けて、政治家に丸投げしてしまうことこそ真の責任放棄であり、民主主義の自殺なのだから。2013/11/27
なつきネコ
17
今までで一番に怖い本だった。この本を読もうと思ったのも、私自身がもしかしてと内心、恐れた事をズバリ言われてしまったな。 麻生の失言を迷言でなぜ終わらせたんだと思っていた。現状の衆愚主義への苦言に見えていたが、さらに深い読みで語るとは。たしかに日本人は安易に流れる。もしかしたら、日本人には民主主義は早かったのではと考えていたが、多くの日本人も肌で感じていたのかもしれないな。しかし、私自身は、組織も国も個人が生きる為の道具、人間は考え続ける物だからこそ、人間を捨てるわけにいかない。2014/02/10
そのじつ
17
読友さんの感想から知って。安倍さんが首相になってからザワザワし続けてきた「気分」が明文化されスッキリとした。何につけても「消費者視点」で関わろうとする人々の台頭もまさにアルアル。「空気を読むな!」と子供を一喝するドラマがあったが、まさに今の私たちが問われるべき言葉。もう○○だから○○しようよ、なんて諦めてしまうことが民主主義をやめる第1歩かあ。私たちが本を読み、日々読解力を磨き、思考を鍛錬しているのは娯楽の為だけではないのだわ…と思い至ったよ。出来る事は何かいな…とまず探すとこから始めよか。まずは投票!2014/01/23
sonettch
15
改憲案を読む限り、自民党が目指す「新しい日本」とは、次のように要約できるでしょう。「国民の基本的人権が制限され、個人の自由のない、国家権力がやりたい放題できる、民主主義を捨てた全体主義の国」(p.28)←本当に頭の中は戦前のままの、化石のような連中だ。彼らが同時代人だということに、とてつもない恐怖を覚える。2013/12/04