出版社内容情報
東日本大震災と原発災害から2年.この間,私たちは何をしてきたのでしょうか.そして,何がわかったのでしょうか.ボランティアとして,また取材者として被災地を歩き,被災者とともに,涙し,悩み,考えてきた作家が,この大災害の意味と原発を生んだ文明について,根底から問い直します.信州岩波講座での講演の記録.
内容説明
あの東日本大震災で、私たちが学んだことは何だったのでしょうか?ここ数十年の文明の発達があまりに急速であったから、つい自分たちは無敵だと考えて、やりたい放題やってきた。でもそうではないのです。それがよくわかった。私たちは反省し、諦め、覚悟した上で、なおさりげなく、日常を送らなければならないのです。―2年間、被災地を歩き続け、被災者とともに泣き、怒った作家の、メッセージ。
目次
講演(「3・11」体験;ぼくたちはよく泣いた;日本という国のあり方が見えてきた;「俺より立派な人がたくさん死んだ」 ほか)
質疑(被災地を訪ねることについて;日本人の同調性について;放射性廃棄物について;沸騰した日本 ほか)
著者等紹介
池澤夏樹[イケザワナツキ]
作家、詩人。1945年生まれ。1970年代から翻訳を始める。1988年「スティルライフ」で芥川賞受賞。1993年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞受賞。2000年『花を運ぶ妹』で毎日出版文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
百太
23
いろんな事を知って、自分で判断する事が大事だし、そうしたい。 2017/03/10
壱萬弐仟縁
12
思い出す、と、忘れない。remember(4頁)。3・11を常に念頭に、すべての行動を律していく。それが、あの日苦悶して亡くなった方々の思いを活かす道。今回の国道雪害も帰宅難民もいれば、移動難民でもあった。3・11の教訓から、被災された方がおにぎりを缶詰のドライバーに配布したとラジオで聴いた。ドライバーは、「一生忘れない」と語ったそうだ。どの被災地でも、人と人の支え合い無くして難局を乗り越えられないことがわかる。地震、津波など所与として(10頁)、諦め、やり過ごす、という方法にも学ぶべき教訓が含まれる。2014/02/20
魔魔男爵
4
叔母が仙台に住んでいたので、3.11後ボランティアの物資運転手として被災地に入った池澤のルポと講演。原発は危険なので歴史の転回点の文明の渚まで退却しようという本。池澤は私の言うことを鵜呑みにせず自分で調べて考えて欲しいと語っているのが流石。池澤自身が無神経なジャーナリストに寄与して、被災者に怒鳴られた汚点も正直にルポしております。縁が無ければ被災者の支援はする必要は無い。しかし、興味を持って自分から動いて欲しいという池澤のお仕着せがましくない言説が爽やかな良書。2017/04/23
Sakie
4
東日本大震災について、原発について。講演を書き起こしたもので、とてもよみやすい。『閉じた社会は必ず腐る』。『後になって、あの時が曲がり角だったねと言えればいい』。『騙された責任』。岩波ブックレットシリーズは、なにかについて考えるきっかけにはとても良い。しっかり考えるには物足りないくらいの情報量であるので、あとは自分で調べなければ。2014/04/27
森閑書庫
2
「考え方」を提起するものというよりは、「脱原発な生き方論」に偏っている。/即時全廃炉派(私は彼らを過激派だと思ってしまう)ではなく、段階的脱原発派の本。最早一つの思想の流れとなった脱原発派が訴える、高エネルギー社会に対する根底的な疑問が非常によく分かる。2013/03/21