出版社内容情報
広島・長崎への原爆投下と福島の原発事故とを結ぶ出来事として、アメリカの水爆実験により漁船第五福竜丸が被爆した一九五四年の「ビキニ事件」へ注目が集まっている。長い沈黙を経て唯一の語り部として知られるに至った、元乗組員・大石又七氏の人生を辿り、人間と核との問題を考える際の根元的な視座を浮き彫りにする。
内容説明
1945年の広島・長崎への原爆投下と2011年の福島原発事故とを結ぶ出来事として、アメリカの水爆実験により漁船第五福竜丸が被爆した1954年の「ビキニ事件」へ注目が集まっている。長い沈黙を経て唯一の証言者として知られるに至った元乗組員・大石又七氏の人生と思索の中に、人間と核との問題を考えるための根元的な視座をさぐる。
目次
1 二〇歳のビキニ事件
2 新たな航路へ―「語り手」として「書き手」として
3 終わらない旅の途上で
著者等紹介
小沢節子[コザワセツコ]
国際基督教大学卒業後、早稲田大学大学院にて日本近現代史を学ぶ。文学博士。早稲田大学などで現代史を教える傍ら、戦時期及び戦後社会と芸術表現との関わりについて研究をつづけている。主な著書に『「原爆の図」―描かれた「記憶」、語られた「絵画」』(岩波書店2002年・第五回倫雅美術奨励賞受賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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おせきはん
26
『戦争ミュージアム』で紹介されていた都立第五福竜丸展示館を訪れた際に購入しました。第五福竜丸の船員は広島・長崎の被爆者と違って法的には「被爆者」ではないこと、第五福竜丸以外の多くの漁船も米国による核実験で被爆していたことなどは初めて知りました。第五福竜丸の船員だった大石又七さんが人々に語りかけ、行動されてきたことの意義深さも理解できました。2024/09/28
Nobuko Hashimoto
23
春休みに、第五福竜丸展示館で購入した一冊。第五福竜丸の乗員で、アメリカによる太平洋核実験に遭遇した大石又七氏にスポットを当てている。長く被爆の経験を公にしてこなかった大石氏が、次第に若い世代に体験を語り、書き記し、医療面での公の援助を受けられるよう運動するようになった経緯がわかりやすくまとめられている。本自体は薄くて読みやすいが、語られる事実や大石氏の半生と訴えは重い。太平洋核実験の問題点と課題を知るうえで、とっかかりに読むのに良い。2022/04/06
壱萬参仟縁
21
1954年3月1日、マグロ漁船がマーシャル諸島ビキニ環礁でアメリカの水爆実験に遭遇。23人被爆(2頁)。大石又七さんは、学歴がないからこそ、分からないことを専門家に教えを請い、本を読み、報道番組で考える学びを実践した(6頁)。このような謙虚な生き方を忘れていた。反省した。死の灰を浴びると、当日夕方に早くも、眩暈、頭痛、吐き気、下痢(12頁)。甚大な被害。1週間で髪の毛が抜けた。戦争に負ける時、原爆で被曝しただけでアメリカは許さなかったか? そこまでされて同盟を維持したり、思いやり予算とか、不条理な仕打ち。2014/03/07
ぱせり
11
そうだったんだ…この事件は一つも決着がつかないまま、被爆者たちともども、うやむやに葬り去られてしまったんじゃないか。先に読んだ絵本『これが家だ』のなかの「けれど わすれるのを じっと まっている ひとたちもいる」という一文がよみがえってくる。 2012/09/02
更紗蝦
10
高校生の時、第五福竜丸事件をテーマにレポートを書くことになり、第五福竜丸展示館に行ったことがあったのですが、グループでのレポート制作であったし、当時はあまり核の問題に関心がなかったこともあり、さほど熱心に展示資料を見ていなかったことが悔やまれました。この本を読んで、改めて展示館に行きたいと、切に思いました。核実験の被害を受けた船は第五福竜丸だけではないはずなのに、第五福竜丸だけがクローズアップされていることで、かえって核実験の被害の全体像が隠蔽されてしまっていることへの言及には、はっとさせられました。2014/04/22
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