出版社内容情報
原始共同体,古代日本,ヘレニズムとヘブライズム,近代社会-文化と社会の形態によって異なる時間概念を比較検討し,近代的自我に特有の虚無的な時間意識がいかに形成されたか,自然・共同体・貨幣経済…との関係から解明する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
袖崎いたる
3
学生時代にかいつまんで読んだ覚えがあるが、まったく読めていなかったらしい。今回の読書にて、その全容の大いさを思い知る。おもにはニヒリズムを出発点にしている本論は、時間というもの「へと」疎外され、「から」疎外されもするという二重の疎外論を提示する。その虚無感は合理精神がどうやら怪しい。日本の古代に目を向けては万葉の時代から古今集へと移ろう様からもわかるというのが面白い。そもそもデカルトのあたりの幾何学が過去や未来を無限に延長させた時間観をもたらし、その結果として現在の頼りなさが導かれたりなんかして。名著よ。2025/04/30