出版社内容情報
ソルジェニツィンと並ぶロシアの亡命作家ジノビエフが,30篇の戯画と詩で,自由と抵抗のシンボル「酔いどれ」の一生を描き,酩酊感を通して終末ソ連を批判する.ゴルバチョフの諷刺画など,他の作品も含めて本邦初公開.
内容説明
アル中は生理的な現象だが、酔いどれは社会的現象である―。ロシアの酔いどれは飲酒という至福の宗教の祭司であり、自由と抵抗のシンボルにほかならない。本書は、20世紀のスウィフトと呼ばれる異才、亡命作家ジノビエフが30篇の戯画と詩で酔いどれの一生を描き、酩酊感を通してソ連社会の現実を批判する。ゴルバチョフの風刺画など、他の作品も含めて本邦初公開。
目次
酔いどれロシア
風刺・肖像・抽象
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおた
17
素晴らしい名言、素晴らしい酔いどれたち、どこをとってもダメ人間。だが、ダメ人間こそが人間だ。きりりと引き締まった文体で、ズボンを売り、テーブルの下で、背中でウォッカを受け取るロシア人がいかに酒を愛するかを描く。ソ連という鉄面皮の下にはこんなにポンコツなおっさんが生きながらえた、それだけで人類の可能性を感じられる。「へべれけの友たちよ!酔いどれたちよ!人類の夜明けを反吐で迎えよう!」『アラブ飲酒詩選』『ロシア亡命料理』『世界の涯まで犬たちと』などと共に並べたい、このダメ感。美しい。2014/12/21
きゅー
13
酔いどれとアルコール中毒は本質的に違うということを戯画と詩によって私たちに示してくれる良書……なのかな。”ロシア人の名高い霊性なるものは酩酊の結果として歴史的に発生した。ロシア人は全歴史をとおして絶えず強まりゆく力で呑みつづけたので、霊性はわが民族の強固な特性となったのである。”これは著者による解説抜粋だけど、この語り口はまさに私たちが想像するところのロシア的ではないだろうか。というか、ロシア小説を読んでいて呑んだくれが登場しないケースのほうが珍しいほどだ。2015/02/13
にしの
4
ロシア人はキリスト教か回教かの国教の選択を迫られたときキリスト教を選んだ…飲酒に寛容だったから。ソビエト全体主義社会を批判して祖国を追われたロシア人、A・ジノビエフ氏による風刺画、詩集。アネクドートを思わせるユーモアでロシアの酔いどれを詩と戯画で連ねている。その手のユーモアが好きなら楽しく読める作品だ。この連作の読書した後、あなたはロシアの酔いどれを西側のつまらない医者のいうアルコール使用障害者にあらずウォッカに殉ずる信仰者に思えてくるに違いない。2021/02/25
紅蓮
3
アル中と酔いどれの違いがよくわかった。作者自身が酔いどれなので、説得力がある。p56の『ウォッカ瓶の引き渡し』、p64の『宇宙に向かう最初の酔いどれ』、p116の『哲学者』の戯画が特に好き。フルシチョフが可愛くない…2013/06/01
酸辣湯
2
詩を理解する能力に欠ける私ですが、アネクドートを読むつもりで気軽に楽しめました。 挿絵の中には体制にたいする批判や民衆のやるせなさがたっぷりと表れています。 お正月なのでロシア人の飲みっぷりを称えるつもりで読了。2019/01/04