出版社内容情報
世界を席巻した学生の叛乱,文化大革命――激動と混迷の1960年代後半の若者たちの夢と痛みを共有しつつ,誠実に生きた知識人高橋和巳の代表的評論を収めた本書は,豊かな日本の怠惰な日常をも撃ちつづける.
内容説明
人間にとってもっとも汲み尽しがたいものは人間であり、人間の精神である―。世界を席捲した学生の叛乱、文化大革命…。激動と混迷の1960年代後半の若者たちの夢と痛みを共有しつつ、誠実に生きた知識人高橋和巳の代表的評論を収めた本書は、豊かな日本の怠情な日常をも撃ちつづける。
目次
戦後文学私論
失明の階層―中間階級論
孤立無援の思想
戦争論
戦争文学序説―運命について
戦後民主主義の立脚点
新しき長城
暗殺の哲学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おたま
20
今回読もうと思ったのは、『新しき長城』というエッセイが収録されていたから。『新しき長城』は1967年5月から6月にかけて他の作家や中国の研究者とともに、高橋和巳が中国を訪問したときのルポルタージュ。まだ中国で文化大革命(文革)が始まって1年ほどしか経っていない時期。当時は「文革」は日本の知識人にとって、また第三世界の人々にとって、社会主義国内での革命、ソ連型とはことなる革命として非常に熱い視線を注がれていた。高橋和巳の文章にも、その希望と期待とが刻まれている。珍しく文章が明るく明解なのだ。2021/09/08
月をみるもの
13
史記の刺客列伝から始まる「暗殺の哲学」を読んで、そういえば、本職(?)は中国の研究者だったんだ、、と思い返す。線の細い、気難しげなインテリゲンチャンっぽいイメージですが、小松左京の描く著者は完全にヤバいやつです → http://sukeru.seesaa.net/article/189304948.html?amp=12022/01/19
hikarunoir
8
森田童子追悼に表題作のみ読む。中国由来の知が遍く塗されるも、表題は神曲での天国も地獄も行けぬ立場を指し、現在己が陥る孤立に援用できず。次は球根栽培か…。2020/01/19
Hatann
3
再読。「総体としての人間は、第一の環境である自然に、そして、第二の自然である人間社会に、それぞれ手を加えつつ順応していくであろう。…(中略)… 限りある生の時間のうちに生き、一回性という動かしえない制限を持つ個別者は、無限の順応体としての自分を訓練する必要はない。蝉脱や転進の意味を認めないわけではないけれども、たった一つか二つの役割を自ら裏切ることなき態度の上に果たすことができれば、おそらくはそれで十分なのであり、役割が終わったと思えば静かに退場してゆけばいいのである。」著者は39歳で亡くなった。2018/09/17
うたまる
2
「一般に、行動者は極端に単純化された観念に献身するものだが、その信奉する観念が単一純粋である故に、彼には全く世界が見えていないと速断するのは短慮である。なるほど机の前に坐って、じっと世界を見廻し、観念をもてあそんでいる者には、世界はより複雑にみえる。しかしその場合、彼に見えている世界は、単なる客観的対象に過ぎない。むしろ世界は、行動することによって現実(リアル)となる。現実の実在感は、単一の観念を信奉する者の試行錯誤の中にしか浮かび上がらないのである。」