出版社内容情報
「パリは移動祝祭日だ」という言葉で始まる本書を1960年に完成し,ヘミングウェイは逝った.「20年代のパリ」を背景に,スタイン,フィッツジェラルド,パウンド,ジョイスら「失われた世代」の青春を回想した不朽の名作.
内容説明
「パリは移動祝祭日だ」という言葉で始まる本書を1960年に完成し、まもなくヘミングウェイは逝った。20年代のパリ、スタイン、フィッツジェラルド、パウンド、ジョイスらとの交友、小説修業の日々…。「ロスト・ジェネレーション」の青春を追想した不朽の名作。
目次
サン・ミシェル広場の良いカフェ
ミス・スタインの教示
〈失われた世代〉
シェイクスピア書店
セーヌの人びと
偽りの春
内職を止める
飢えは良い修業だった
フォード・マドックス・フォードと悪魔の弟子
ドームでパスキンと共に
エズラ・パウンドとそのベル・エスプリ
全く奇妙な結末
死の刻印を打たれた男
リラでのエヴァン・シップマン
悪魔の使い
スコット・フィッツジェラルド
鷹は与えず
寸法の問題
パリに終りなし
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
84
ウッディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』の基になったのが、この『移動祝祭日』だというのを聞いた時に古本屋さんで見つけて購入しました。華やかなパリの生活。しかし、第一次大戦で国に対する不信を抱えた若者達が怠惰で緩やかな破滅と再生を遂げていた場所でもあった。後、スコットフィッツ・ジェラルドの奥さんのゼルダがヘミングウェイと夫の仲良さに嫉妬していたようです。しかし、ヘミングウェイは「ゼルダがいなければ、彼は作家としてのびのびと活躍できるのに」とゼルダを疎んでいるのをはっきり、書いているのにヒヤヒヤ。2019/01/04
erierif
17
作家として認められはじめ美しいパリで注目されつつある新進気鋭の作家のきらきらした日々がのびのびと描かれていてうっとりする。絵や美食や芸術家達との交流。ベルエポックのエネルギーを感じた。だがしかし、この小説が書かれたあとヘミングウェイは亡くなる。最後に生まれ故郷でもキューバでもなくパリでの日々を何を思い何を伝えたく書いたのであろうか。フィッツジェラルドの章が2つ続きまた非常にセクシャルな単語が使われているの事に訝しむ。そして妻との不和の始まりや多量のアルコール描写など不穏さが影を落としている。2017/11/08
tsukamg
2
高見浩さんの訳は何度も読んだ。本書は旧訳。高見さんの訳と比べて明らかに違うのは、カギ括弧の中。特に女性の言葉使い。あと、なぜかあまり食欲をそそられなかった。2023/02/28
amanon
2
自殺する一年前に書き上げられた本が、自分の青春時代の思い出を綴ったもの。しかも、その死と符合するかのように、ラストは妻との間に隙間風が吹き始める様子が描かれているというは、何かの暗示か?それはそうと、ジョイスやパウンドといった著名人との交流、そして時に金銭的には苦しい状況にありながらも、生活を楽しむスタンスを貫いている姿に、少なからず憧憬を覚える。後、個人的にとりわけ気になったのは、フィッツジェラルドとの関係。お互いに認め合いながらも、一方で強く憎み合っている側面も見せる、その複雑な関係は非常に興味深い。2023/01/26
doji
2
これまで読んだことのあるヘミングウェイの中でもとりわけ哀愁に溢れ、全編にわかって繊細な筆致で描かれているのにおどろき、とにかく夢中になった。フィッツジェラルドとゼルダの関係の描写はほんとうに美しくも残酷で、思わず読み終わってじんわりとしてしまった。ウディ・アレンの『ミッドナイトインパリ』はまさにこの時代なんだな。2018/10/14