出版社内容情報
史料の独特な解読が,謎につつまれた大革命に至るフランス社会のさまざまな階層の人々の精神と行動を生き生きと描きだし,社会史研究の最新の達成と評価される原書の中核的論文に,新稿を加えて編集したオリジナル版.
内容説明
18世紀初頭のある日、パリ労働者街の猫がのこらず殺されたと記す印刷労働者の奇妙な手記は何を物語るか。史料の独特な解続が、謎につつまれた大革命に至るフランス社会のさまざまな階層の人々の精神と行動を生き生きと描きだした。社会史研究の最新の達成と評価される原書の中核的論文に新稿を加えて編集したオリジナル版。
目次
農民は民話をとおして告口する―マザー・グースの意味
労働者の叛乱―サン・セヴラン街の猫の大虐殺
続者がルソーに応える―ロマンティックな多感性の形成
フランス革命はなぜ革命的だったか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
misui
5
18世紀フランスの精神世界を再現する四つの論考。社会史の立場で民話や当時の日記を読み解いており、特に民話については社会の悲惨な現実が浮かび上がってくる。「邪悪な継母」のモチーフが母親の死亡率の高さと関係しているとか、言われてみれば納得で、精神分析などの読みでは見えてこない部分が読み取れるというのは参考にしたいところ。2021/09/05
かんやん
3
18世紀のフランスの民衆を扱った四篇の歴史論文。フロムら心理学者の民話分析の誤りを指摘する箇所が愉快。精神世界の他者性という言葉に出会い、考えさせられる。安易な共感や解釈を拒み、資料を読み込み推理する手腕は時に鮮やかだが、説得力に欠けるところも(読書論など)。猫の大虐殺を見事に説明できても、フランス革命の九月虐殺は「絶対に説明不可能」とするのは、もはや問題が歴史家の領分を越えてしまっているからかもしれない。現代からは見えずらくなった過去の一時代の精神世界を垣間見ることのできる良い歴史本でした。2015/07/12
at@n
0
社会史、心性史のテキストのような本。大学の教科書とかに使われてそう。表題作より、ルソーによって新しくもたらされた読書の方法についての章のほうが面白かった。2011/07/22
陽香
0
岩波、19900309
みなみ
0
同時代ライブラリー発刊当時に読んだ。題名のインパクトが忘れがたい一冊を、古本まつりで見つけて再読。冒頭は昔話、民話について。継母がよく登場するのは、寡婦の再婚率のほうが低いため。子どもを捨てるのは食べるものがないから。そう説明されるとなるほど。しかし、今となってはその世界(生きていくことさえ困難である)が想像できずに、意地悪で邪悪な継母が子どもを捨てる類型だけが残ってしまったように思う。猫の大虐殺はけっこう残酷な内容。これもまた殺伐とした時代だ。2019/11/06