出版社内容情報
近代君主としての天皇像の成立過程は,民間にも様々な議論を喚起し,民衆の意識に大きな影響を与えてゆく.宮廷改革の実態,全国的巡行の記録,官民の国体論,女帝論など,公文書・日記・新聞論説などにその諸相を見る.
内容説明
洋服着用や肉食などにはじまる、近代君主としての新しい天皇像の形式過程は、民衆の意識に大きな影響を与えていく。四回にわたる全国巡行の記録をはじめ、宮廷改革の実態から天皇の教育の内容、官民の国体論や「不敬演説」の裁判記録、女帝論や「帝王神種論争」などをとりあげ、当時の「天皇報道」や日記・記録、公文書などの中にその諸相をみる。また華族の形成過程と華族論を扱う。
目次
1 近代天皇像の形成(宮廷の改革;天皇像の諸相)
2 地方巡行(明治九年東北・北海道巡行;明治十一年北陸・東海巡行;明治十三年山梨・三重・京都巡行;明治十四年山形・秋田・北海道巡行)
3 官民の国体論(天皇輔導の意見;民間の国体論)
4 不敬罪と皇室典範(「不敬」事件と不敬罪;皇室財産と皇室典範)
5 華族身分の成立(華族会館設立の過程;民間の華族論;華族令と華族世襲財産法)
感想・レビュー
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秋津
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明治憲法制定までの天皇・華族に関する史料集。華族は軍事に従事すべしとの意見は「封権ノ勢ヲ暗々裏ニ養成スル」恐れがあるという批判や、「貴族必ズ君民ノ間ヲ離隔」するものであり、それは廃すべきであるといった意見は、新政府の打ち出した「皇室の藩屏」等の役割を担う華族制度がどう受け止められたか、当時の空気を読み取れるなと。主に第5章「華族身分の成立」目当てで読みましたが、その他の章における天皇像や皇位継承の在り方についての議論は、時代背景や観点などは違えど、ちょうど今も話題になっていて、そちらも興味深く読むなど。2016/12/04