出版社内容情報
「みんな手紙を待ってる。難民として認定する、って書かれた手紙。」十五歳のマディーナは、命がけで家族とこの国に逃げてきた。学校に通い、友情や恋に悩み、新しい生活になじもうとするマディーナ。留まれるのか、送り返されるのか。あいだで揺れ闘う少女が日記帳にぶつける、怒りと葛藤とあこがれの日々。装画=蓮池もも
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
21
本編のヒロイン、マディーナは15歳だ。両親と弟ラミィとアミーナ叔母とが、一部屋に暮らしている。大人3人に子供二人が一部屋は狭いが、家でなく、施設=仮の宿だからだ。難民認定されれば、新しい住居が世話され、仕事もできるようになって、生活が安定するが家庭はなかなか認定が下りない。今いる場所の国民でもない。しかし、逃げてきた国の国民でもない。そう、彼等は間に生きている。両親はドイツ語が流暢に話せず、ここでの友人もあまりいない。最も社会とつながっているのは学校に通っているマディーナだ。だから彼女と両親の意識は乖離。2024/10/19
菱沼
4
主人公の祖国も、今いる国も、はっきり特定されていない。けれど、女性が軽んじられ、長男が家を背負う使命感を持っているというのは今の日本でもあることだと思った。主人公の心象がよくわかる。最後の方の「わたしは航海士。船をあやつるのは、わたしなんだ」という言葉が印象的。中島みゆきの「宙船」を思った。この歌を聞いたときから、冒頭部分が好きだった。牛久入管収容所のことを考えた。そこに暮らすのは「人」なのだ。国籍に関わらず人間なのだ。人間が暮らす場所が人間らしくある、この普通のことを日本で実現できないのはなぜなのか。2025/01/02