出版社内容情報
1959年、メンフィス。人と話すのが苦手なぼくが、新聞配達を引き受けることに。大人の世界へ一歩踏み出した、夏の出会いの物語。
内容説明
1959年、メンフィス。ぼくは夏休みのあいだ、友達の代わりに新聞配達をすることになった。すぐにどもるせいで人と話すのは緊張する。でも大人の世界へ一歩踏み出したその夏は、思いもよらない個性的な人たちとの出会いと、そして事件が待っていた―。
著者等紹介
ヴォーター,ヴィンス[ヴォーター,ヴィンス] [Vawter,Vince]
メンフィス生まれ。地元の「プレス・シミタール」社で新聞記者としてキャリアをスタートさせ、四十年余にわたってジャーナリストとして活躍。自身が吃音者であり、吃音症についての啓蒙活動も行なっている。初の小説となった『ペーパーボーイ』は、2014年度ニューベリー賞オナーブックに選ばれた
原田勝[ハラダマサル]
1957年生まれ。東京外国語大学卒。翻訳家。ヤングアダルト小説を中心に英語圏の児童書の翻訳を手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mocha
94
舞台は1959年メンフィス。著者自身の回想をもとに描かれる吃音の少年のひと夏。友人の代わりにペーパーボーイ(新聞配達員)として社会に一歩踏み出した少年がさまざまな人々と出会い恐ろしい事件にも巻き込まれる。少年による回顧録という体裁なので彼の嫌いな読点がない。それでも読みづらさがないのは訳者の力量だろう。人種差別の問題も絡めて読み応えのあるとてもいい本だった。2018/07/22
茜
81
吃音者の心理や苦労、障がいを克服するための考え方や、家族や周囲の人たちの態度なども描かれていて良い本でした。2018/10/02
星落秋風五丈原
73
1959年、メンフィス。ヴィクターは夏休みのあいだ、祖母の家に行く友達ラットの代わりに新聞配達をする。彼等から書物からだけでは得られないことを教わる。配達する度にヴィクターにちぎれた紙幣と一つずつ言葉を贈るスピロさんからは自分で考えることの大切さを。いつも悲しそうな顔をしている綺麗な人妻ワーシントンさんからは、複雑な人間性を。家で働くメイドのマームから「近づくんじゃない」と言われているRTからは底知れぬ人の悪意と恐怖を。いつもヴィクターを「リトル・マン」と呼んでくれる強くて優しいマームからは無償の愛を。 2016/08/02
NAO
72
吃音症がありなかなか世界を広げられずにいる少年が、友人の代わりに一夏新聞配達をすることで成長する物語。スピロさんとの問答から少年は世界を広げることの大事さ楽しさを知り、配達先の人々との触れ合いから自分だけが孤独なのではないことを知る。また、メンフィスという舞台柄から黒人問題にも触れられている。誰よりも心が優しく良識に溢れているのが、知識人のスピロさんと何の教養もない黒人乳母のマアムであるというのが、何ともいえない。人間としての非凡さは、教育だけで培われるものではない、ということ。2018/09/20
はる
60
吃音のせいで内気な少年ヴィクターは、夏休みの間だけ親友のかわりに新聞配達を引き受けることになります。様々な人たちと出合い、多くの経験を経て少しずつ成長していくヴィクター。作者の自伝的な物語ということで、繊細な心の動きが瑞々しく描かれていますが、終盤は思わぬ事件に巻き込まれてしまいハラハラドキドキ(このあたりの展開はトムソーヤーのインジャンジョーを思い出しました)。メイドのマーム、知的な老人スピロさんが魅力的。作者のあとがきの言葉も素晴らしかった。おすすめです。2016/09/12