内容説明
1989年ブダペスト。15歳のシャーンドルは、仲間と奇妙な商売に手を染めていた。それは秘密裏に入手したアメコミを売りさばくこと。ところがコミックを提供してくれるミクラさんが失踪し、シャーンドルの人生もまた思わぬ変転を迎える。独裁政権下のハンガリーを舞台に、思春期の少年の葛藤と成長を描く。イタリアの児童文学賞バンカレッリーノ賞受賞作。
著者等紹介
バッカラリオ,ピエルドメニコ[バッカラリオ,ピエルドメニコ] [Baccalario,Pierdomenico]
1974年、イタリア、ピエモンテ州生まれ。児童文学作家。高校時代より短篇の創作をはじめ、15日間で書き上げたという『La Strada del Guerriero』で1998年にデビュー。『コミック密売人』で2012年度バンカレッリーノ賞受賞
杉本あり[スギモトアリ]
出版社勤務を経てイタリアへ留学。文芸翻訳の他、映像、雑誌、公的文書など、多方面で翻訳に携わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴィオラ
17
仮面ライダーでも、ウルトラマンでも、野球選手やサッカー選手、父親でも母親でも、自分にとっての「ヒーロー・ヒロイン」を持てる子供って、幸せなんだろうなーって思った。それよりなにより、各章の見出しを見てるだけでもニヤってしちゃうくらい、アメコミ好きは楽しいと思うよ。出てくるコミックも、ここ数年の翻訳ラッシュで、だいたい分かるしねw2015/08/06
qoop
8
共産主義政権が倒れる革命前夜のブダペストを舞台に、禁忌視されるアメリカンコミックスに魅入られた少年たちの秘めた生活を通し、自由への希求を書く。本書で描かれるハンガリーの状況は当時の彼地を体験していないイタリア人の著者によるせいか、実際以上に管理社会として書き出されいるとのこと。ただ、家庭環境の点でも追い詰められていて閉塞感に溢れていた15歳の主人公の目には、あるいはそう映っていたのかもしれないと感じさせる。また、ヒーローを求めながら現状からの脱出を願う上で、バランスが取れた年齢だな、とも。2019/06/19
ワッピー
7
ベルリンの壁崩壊前のブダペストで、偶然アメリカンコミックを定期的に入手できるようになったシャーンドルは、仲間と秘密のコミックマーケットを作りあげ、親友ニコライとともに独自の作品世界を考え始める。ベルリンの壁崩壊前の不安定な世情の中で、アメリカンヒーローに憧れつつ、異性への関心も高まる背伸びしがちな年頃の微妙な心情がよく伝わってきます。自分の世界が崩壊し、ハンガリーを離れたシャーンドルがブダペストを再訪したとき、彼が見出したものは・・・。ほんのちょっと「悪童日記」を連想するのは東欧つながりだからでしょうか?2015/04/05
kokekko
5
あとがきで、この時代にこの状況を実際に経験した人の作品ではないことが語られている。でも今でも多くの人を励ましているアメコミが、東側の世界でこんな力を発揮していたらいいのにと、私も読みながら夢を見た。主人公たちが空想していることと、実際の現実の要素の境目がそこまでハッキリ対比されないので、「うん?」というところもあるが、全体的には楽しく読んだ。こういう『歴史もの』は楽しいなあ。いい読書をした。2021/12/21
Y.C.STUPID
4
まあなんというか、逃げ場を創作物に求めるストーリーには点が甘くなるので、とても良かったです。いつも思うのだが児童書は理想が高いな。同年代の読み手に主人公の鬱屈が届くのかどうか、きっと分かる子は分かると思うけれど……2016/12/24