出版社内容情報
二十世紀前半、物理学が大きな発展を遂げた時代に活躍した物理学者、リーゼ・マイトナー。なかでも「核分裂の発見」という業績は後世に多大な影響を及ぼしたが、第二次世界大戦後、発見の栄誉は共同研究者に奪われてしまう。ユダヤ人差別、女性差別に遭いながらも研究を続けた、「人間性を失わなかった物理学者」の生涯をたどる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
104
「科学は客観的なふりをしているが、しばしば人間の偏見にもとづいて形づくられる」。オーストリア出身の物理学者リーゼ・マイトナーの生涯を描いた伝記。彼女は核分裂の事象を初めて正しく解釈した研究者として知られる。その才は著名な学者達が認めるものだったが性別と人種の差別から地位も環境も不当に扱われてしまう。どこに行っても属していないと思わされる孤独、相手の都合で存在を否定される辛さ。それでも探究心を持ち続けた姿に感服。科学の行方と人間性、その関係を彼女の信念を交え考え、そして彼女の名が冠された元素に思いを馳せた。2024/04/05
しんすけ
17
リーゼ・マイトナーはニールス・ボーアやアインシュタインと同時代の人であり、彼女が遺したものはその時代の先端にあるものだった。原子に核分裂という現象があることを発見したのはマイトナーだった。 しかし彼女がノーベル賞を受賞することはなかった。 ユダヤ人であり女だったからか? それよりも、本書には読むことが辛くなる個所が多すぎる。 その一つが、二度とあってはならない時代が背景にあることだ。それは現日本の為政者が愛して止まない時代だ。ナチスによる人種差別の時代であり、学術さえも踏みにじられていく時代である。 2024/08/25
mft
7
リーゼ・マイトナーの伝記。各章の扉イラストに書かれた文字を本文が受けて始まるスタイルなのはちょっと読みにくかった。マイトナーはまず時代的に女性であるというだけで学問の世界で苦労し、やがてユダヤ人であるということがドイツという場所で危険性を帯びることになっていく。オットー・ハーンとの共同研究が軸になるのだが、ナチスとの関係で亀裂が入る、核分裂の現象を最初に見たのはハーンだったが、それが核分裂であると理解したのはマイトナーだった。ノーベル賞はハーン単独で受賞した。2024/06/26
mawaji
5
小林エリカ「彼女たちの戦争 」の「リーゼ・マイトナー」を読んで深堀りすべく参考資料から手に取りました。複製のメダルしかもらえなくても批判せず、核分裂の発見を横取りされても従容と受け入れていたリーゼの心情を思うと、当時の科学界も男性優位の社会もノーベル賞受賞者たちもぜんぜんイケてないと思わざるを得ませんが、その状況はもしかしたら(もしかしなくても…)今も連綿と続いているのかと思うとほんとうに申し訳なく思います。MGMにホイホイ飛びついた甥っ子フリッシュの行動を鑑みてもリーゼの高潔さが伺えるように思いました。2024/08/23
takao
5
ふむ2024/05/30